研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -021/049page

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● 家族関係

家族関係
(親子関係)

 父は,妻との関係はうまくいっているように感じているが,妻の方は,そうは思っていない。両者の間にすれちがいがあるように思われる。

 父は,衝動的に暴カを振うことがあったが,最近では無くなってきている。

 母は,夫の養育態度に不満で、常にいらいらした気持ちでおり,その不満が,本人への屈折した態度となって表出されている。

 時には,ヒステリックな態度とともに,戸を締めて家から締め出すことが度・あったり,暴カを振ったりしている。それに対して本人が母に反抗するようなこともあった。

 本人は,姉弟の仲はあまりうまくいっていないと思っている。両親と弟の仲は,うまくいっているが,両親と本人とは良い関係ではないと思っている。

● 家族成員の性格と養育態度

 父は,世間体を気にするタイプで,親としての自我エネルギーが低く,未成熟な大人である父親として家庭で規範性を示しえない。

エゴグラム
エゴグラム

 父の養育態度は,本人に対して常日ごろ,無関心であったり,無視しがちでありながら,何かあると,親の意見を強制的に,一方的に押しつけがちである。

 母は,父と同様に世間体ばかりを気にしていて,自由さが足りない。したがって,子どもの気持ちがわからないところがある。子どもと接する時の態度が,どこかぎこちなくなり易い。

 母の養育態度は,父と同様に本人を無視したり,放任したりするような拒否的な態度で接していて,基本的生活習慣を身につけさせるような努力は怠っている。

 また,養育態度に一貫性が足りず,場合によっては過干渉になったり,その時の気分で,親の思い通りにしようと体罪を加えたりと常に矛盾した養育態度になりがちである。

親子関係診断検査(田研式)
エゴグラム

 さらに,夫の養育態度に不満を抱きがちで,子どもたちの前でも夫婦で言い争いをしがちである。

ー実存的次元ー

● 両親の言い争いや,一貫性のない矛盾した態度によって,常に情緒が不安定である。問題行動をおこした時など,母との言い争いのあとに時々,「病気が治らないのなら死んだほうがいい」ともらすことがある。

5. 診断

 両親の拒否的な養育態度,特に,母の拒否的で支配的な養育態度から,母への愛情飢餓の状態が常にあり,自暴自棄的な行為がみられる。

 さらに,家庭内に規範性がなく,一貫性のない養育態度や,本人の病気治療への不安や食事制限への不満などが,常に情緒不安定な状態をつくり出し,軽率な行為や責任感の欠如などから,問題行動をおこしている。

6. 指導仮説

 主な指導事項は

 (1) 情緒の安定をはかる。


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