研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -027/049page

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と進んで用具の後仕末さえするようになった。

(2) 級友との関係の改善

 1 ロール・プレイング

   本人「Aさん,靴買う金たりないから,金貸してくれない。」
   A  「……………」
   本人「ね,貸してくれない,ね,頼んでいるのにわかんないの。」
     「なんとか言ったら。え,私のこと馬鹿にしてんの。」

 いろいろなやりとりを重ねる。友達の気持ちがわかるようだといやな表情をする。何が大切かその心情を考えることを課題とする。

  2 カウンセリング

   つっぱりグループとの関係の改善を主に考える。最も困難な問題は,結びつきの強かったメンバー一人一人との関係をどうするかである。本人の意志(問題行動に対する反省の気持ち)を支持しながら,友達との関係を具体的に話し合う。その中で自分を素直に表現すること,“yeS"“no"の意志表示をはっきりすること,の2つを約束し実行する。

 (3) 親子関係の改善

   父親は本人との関係の浅さを認める。
「話してもだまっていることが多いし,こちらから声をかけることが少なかった。」
「お父さんは話しかけても返事もしてくれなかったり,聞いてくれないので声をかけにくい。」

   カウンセリングを続ける中で,両親には,子供への愛情のある接し方を具体的に話し,本人には,どんなことでも両親に話しかけるように心がけてみることを約束する。

   「お父さんが私に話しかけたり,話をまじめに聞いてくれることが多くなったのでとても話しやすくなったし,お母さんにも私のことで文句をいうことが少なくなったの。」と笑顔で話すようになってきた。このことばで代表されるように,少しではあるが親子関係が改善されかかってきている。
           (カウンセリング)

 (4) 夫婦関係の改善

   夫婦の合同面接,父親の話す回数が多く,ほとんど母親の意見はだされない。子供の養育について話題をすすめる。

  母親「家のことはなんでもお父さんが決めてくれるのはいいけれど,私の話も少しは聞いてくれるようにしてほしい。」

   と小さい声でいう。父親は特に答えようとする様子がなく,母親はさかんに父親の顔色をのぞきこむようにする。

   父親が母親の話をよく聞き,養育についての共通理解を持って子供たちへ接することの大切さを話す。

  父親「もっとお母さんの話を聞いて,一緒に子供たちのことを考えるようにしていきます。そうします。」

家庭へ戻り今後両親が協カしあえるかについて,今後のカウンセリングでたしかめ,その重要さについて助言を繰り返していきたい。
           (カウンセリング)

8. 考察

 本人の問題行動の表面的な部分である喫煙,シンナー吸引,家出などは親子関係が改善にむかっているためかほとんど見られなくなってきている。

 また,つっぱりグループでのいじめの行動も現在は姿を消している。しかし,グループメンバーとの関係,学習の遅れの問題など今後解決しなければならないことが多く残されている。学校,特に担任との連携を深め,学習やグループの問題の解消をはかっていくようにしたい。

 更に,カウンセリングの中で自己確立の援助や社会規範についての正しい考え方ができるような援助もはかっていきたい。


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