研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -031/049page

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ー家族会議のようすをお知らせ願う。

 父 「この2週問,4度話し合った。有意義だった。初めはとてもぎこちなかった。」

 母 「夫(父)ががんばってくれて…。本人ともようやく話が通じてきた。子供というのは,一度に大人になれないことが分った。」

 姉 「家族みんながいいたい本音を出した。」

 弟 「今まで家族が話をすると,いつも僕のことだった。今度の話し合いで安心できた。」

ーそれで家族の皆さんに気持ちの上で,どんな変化があったか。

 母 「夫(父)が頼りになる存在であることが分った。胸がスーツとした。」

 姉 「いつもいらいらしていた。その気持ちがなくなった。」

 弟「家出をしたり,悪いことばかりをしてすまないと思った。」

 父 「もっと早く私の責任を果たすべきだった。」

ー今後,さらにどんな努力を続けるか。

 姉 「弟の気持ちを分ろうとしてみたい。やさしく手助けをすることもやってみたい。」

 母 「甘えさせる。母としての自覚をもつ。夫(父)にもっと寄りそうようにする。」

 弟 「悪いことはすっぱりやめる。」

 父 「家族が真剣に話し合うことで,お互いのきずなが強まり,その結果本人の行いも改まってきた。本人の問題は,実は家族全員の問題だった。さらによい家庭をつくろう。」

 (4) 第8回面接ー本人との両接ー

● 薬を1日2回,きちんと飲んでいる。カーツとすることがなくなってきた。

● 授業妨害や教室抜け出しをしなくなった。しかし,数日前バイクに乗った。悪いと思った。

● 体育館でバドミントン。ゲームに熱中。判定をいいかげんにしなくなった。

● 高校に進学したい。勉強したい。

 (5) 第9回面接ー本人との面接ー

● 担任の先生と何回も話し合った。今まで迷惑をかけてすまないと思った。初めての気持ちだ。

● 今つきあっている友だちと話が合わなくなってきた。カンパがきた。恐かったが断った。

● 情報処理室で,コンピュータ実習を見学。

 「こんな仕事をしてみたい。自信はある。」

 (6) 第10回面接ー並行面接ー

  1 本人

● 通学服,靴を学校で決められたのに変えた。

● タバコ,シンナー,バイク運転をやめた。

● 体育館でバドミントン。相変わらずぎこちないが伸び伸びシャトルを打つ。箱庭療法。

箱庭療法

本人,「1 テーマはオアシス。
2 のどがかわいていたが,ようやくオアシスをみつけた。」(家族と思われる4頭のラクダが家族の座に向かっている。家族のきずながかたくなった。)

  2 両親

● 家出などの問題行動がなくなってきた。

● 学校に妻(母)と行ってきた。落ち着いて生活しているときいてホッとしている。

● 多くの人に迷惑をかけた。これから夫婦で協力してよい家庭をつくっていく。

8. 考察

 本人の,家庭や学校における新たな人間関係づくり,道徳性の涵養には,ロール・プレイングが有効であった。また,家族療法を機に反社会的行動を着実に減少させていった。それは,両親が自らの役割を自覚し,愛情をかけ,存在を認める養育を心がけ,不十分ではあるが下図のような機能充実的な家族システムを構築したからである。

 この過程で,本人も情緒が安定し,新たな自己像をつくりつつある。

家族システム


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