研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -035/049page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

にとって,いけないこと,決してやっていけないこと。」と,きびしく指導した。かなりの時間をおいた後,「ハイ」と素直な返事が返ってきた。

性への衝動を感じるのは自然の現象だが,自分の意志で衝動を抑えること,転換することが課題であり,また,親であることの社会的,経済的な条件について十分考えてみるよう指導した。

 (3) 学校における問題行動の改善

● 学校での問題の行動は何かな。

  「授業を抜け出す。ラジカセをならす。大声を出す。トイレでタバコを吸う。グループが目をつけられている。」

● そのことを,どう思っているのかな。

  「人に迷惑をかけるからやらない方がいい。」

● きみがやめれば,他の人もやめると思うが,しばらく考えたのち,「そうですね。」

ー教師の受容的,共感的な理解を強く願っており,改善の意志を表明した。

 (4) 家族関係の改善

● 本人について,今一番困っていることは?

 母.話しかけても,うるさそうな顔で,「そんなこと知ってねー。」といって,場をはずすこと。全く勉強しなくなったこと。

 父 : 注意すると逆方向に行くから,めったに話しかけられないこと。長電話をしていること。

● 本人に,今どうしてほしいか。

 母 : これでは,進学は到底望めない。

 父 : 人に迷惑をかけない人に……。

● 本人が,心から親に求めているのは何か。

 母 : ………。家庭を明るく,楽しく……。

 父 : ………。気持ちをわかってやり,相談できる相手になること。

ーここに至るには,3回の面接が必要であった。

● そのためには,どうすればよいか。

 父 : 私たちがよく話し合い,矛盾のない一致した態度にしていくこと。私がもっと積極的にかかわる。

 母 : これからは,本人の話を十分に聴くようにする。母親の役割を生かす。

ー4回目の面接にして,父親が初めて母親より先に話をした。更に,禁止,指示,命令,建前的な態度から無条件に受容した対応に変えること,特に,家庭内における父親の役割を強め,両親の協カが大切であること,また,女生徒の母親とも協力して本人を改善していくというような意味の考えを父親が述べた。

ーその後,2回の面接を経て,家庭内の人間関係がよくなったと報告があった。

 (5) 生き方を考える

● 本人が自分の能力を理解でき,自らを厳しく見つめる姿勢を育てる指導援助を通して,社会の一員として立派に働き得る人問になりたいという人生の目標をとらえていった。

● 「将来は,歴史の先生になりたい。」

8. 考察

 不純異性交遊については,本人のrセックスはもうやらない。」ということば通り,消失した。A子との交友は,時刻,場所,回数においても健全化された。

 また性的な問題行動の原因は,家庭環境、わけても両親のしつけや養育の態度,両親の在り方や人間関係に起因することが多いことから,両親や家族へも適切な指導援助をすることが必要である。

 更に,学校における問題行動は,その要因が多くの場合家庭にあるとしても,教師の受容的,共感的理解のもとに,相談的にかかわることが大切である。学校との連携により,適切な指導が図られ,不適応集団の改善がみられた。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。