研究紀要第62号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -042/049page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 時に二重拘束状態になるなどして,情緒不安定になることが多いと考えられる。

5. 診断

 面接,心理検査から総合的にみて,両親の養育態度のまずさなどから本人の社会化の不十分さをきたし(特に規範性の未発達)更に高校入学以来の友人関係のつまずきが誘因となって起きた一種の思春期の適応障害と考えられる。

6. 指導仮説

 診断に従い,行動カウンセリングを中心に,その都度適切な技法を用いながら次の事項について指導をおこなう。

 (1) 規範性を育てる指導

 (2) 自我のアダルト的部分(行動についての理由づけなど)を育てる指導

 (3) できれば,不適応環境の調整

次に両親に対しては,カウンセリングの中で,問題が起きたことで生じている親としての自信喪失を改善させる指導が必要である。

 最終的には,家族全員が集って,それぞれの立場を理解し合うために家族カウンセリングを実施する必要がある。

7. 指導援助の経過

 (1) 規範性を育てる指導

   DATにみられるように規範逸脱傾向が高いと共に性格的にも意志の弱さ,軽卒さが問題になるので行動カウンセリングの中でこうしたことの改善をはかる必要がある。

 そのために,本人の好きな卓球部に入部することをすすめ,部活動を通して,

・ ルールを学習させる。(特にきびしく)

・ 卓球部の活動がつらくても止めないで継続できるように援助する。

          (行動カウンセリング)

・ センターにおいても,卓球を実施し,終了後,そのルールと反則について話し合う。

          (運動療法・論理療法的カウンセリング)

 (2) 自我のアダルト的部分を育てる指導

   本人のエゴグラムに見られるように極めてアダルトが低く,論理的思考が大変困難なので,これを育てるために

・ 行動する前に,一寸の問(30秒〜1分)これからする行動の意味を考えてみる。その結果を報告する。

          (行動カウンセリング)

・ 学校の服装についての規則を資料にして,くり返し話し合う。

          (論理療法的カウンセリング)

 (3) 不適応環境の調整

   友人関係には特別な指導を加えず,そのままにし,本人の自我の成長をみて考える。

 (4) 親の自信喪失を改善する指導

   いい子であった娘が,高校入学以来,次々と問題を起こして,どうしようもなく,自分たちの無力さに混乱しているので

・ なぜこの様な問題が起きたのかについてよく説明し,安心させる。

・ 問題行動の改善のために,それぞれ親に適切な役割を分担してもらうよう話し合う。

・ 改善がみられたら,家族全員が集って,担当者と共に話し合う。

          (家族カウンセリング)

 以上の指導を本人・親とよく話し合い,相互に了解し合いながら実施した。

 その中で特に注意したのは,結果についてのフィードバックで,フィードバックのための情報の提供を,両親と担任に依頼した。

 その情報を取捨選択して本人にフィードバックし,少し過度にほめるなどして主として言語による強化をはかった。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。