研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -004/046page

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2. 生徒指導と連帯感

 生徒指導は,「一人一人の児童生徒のもつ諸条件(素質,能力,環境,生育歴,進路の希望等)に即して,現在の生活に適応し,個性を伸長させ,その所属する集団生活の向上を図るとともに,集団の成員としての生活を充実させ,さらに,将来において社会の中で自己実現できるような資質,態度を育成する」ことをねらいとしている。
 このねらいは,学校という集団生活の場を通して,社会的資質をはじめとする豊かな人間性の育成を図ることととらえることができる。

 最近,生徒指導を含めて,個性尊重の考えが重視されてきているが,学校教育は集団指導を通して行われることが多い。集団指導では,集団の民主的雰囲気の盛り上がりを重視し,成員の集団に対する所属感,成員同士の連帯感を高め,各成員に,それぞれの個性を発揮することによって集団に寄与するような役割を与え,各成員問の相互理解,相互尊敬及び相互作用を高めるように工夫することが必要である。
 ここに,児童生徒の社会的資質の育成及び集団生活とのかかわりで,連帯感の育成が必然性をもつものとなる。すなわち,豊かな人問性の育成を図るという開発的な生徒指導を充実させるためにも,連帯感の育成は重要な意味をもってくるといえる。

 現在の児童生徒の一般的傾向として,「要求は強いが貢献は考えない」「自己中心的で他人のことを考えない」「困難な仕事は避けようとする」などがいわれているが,これらは,集団や社会への連帯感や所属感の欠如とかかわる問題と考えられる。
 もちろん,今の児童生徒は,明朗なことや自分の考えがはっきりいえることなど,多くの望ましい特性をもっているといわれるが,前者のような考え方や態度は,人間性豊かな児童生徒の育成という生徒指導の究極的な目標の面からみても,今後の指導が待たれるところである。

 このような現状をふまえ,連帯感の育成を特に人間関係と集団活動から考え,生徒指導との関連を述べてみる。
 学校の教育目標を達成するためには,学校を構成する教師と児童生徒,児童生徒相互の望ましい人間関係が実現され,促進される必要がある。「生徒指導の手引」(文部省)の中でも,生徒指導の課題として,第1に「人間関係の改善と望ましい人間関係の促進」をあげているがこれらの人間関係の根本にあるものが連帯感であるといえる。そして,連帯感を育てるためには,信頼と親愛に結ばれた人間関係が確立されていることが必要であるともいえるのである。
 また,個性の伸長は,生徒指導の基礎であると同時に目標でもあるが,これは,児童生徒が自己の個性を生かしながら,集団や社会を構成する良き成員として,集団生活や社会生活を進めていけるような資質や能力,態度の発達を図っていくことであるといえる。このような個性の伸長は,集団生活を通して培われていくものであり,集団生活の維持向上を図るためには,連帯感の育成が欠かせないものである。
 集団の中においては,それぞれの成員が心を寄せ合わなければ,集団が維持されないであろうし,互いに心をふれあい,愛情と信頼で共感し合うことが薄ければ,集団の課題の達成においても,十分な力を発揮することはできない。このように,集団活動をより充実させるためにも,連帯感の育成が望まれるのである。

 そして,望ましい集団活動を数多く実践することによって,児童生徒一人一人の連帯感が高まり,一人一人の連帯感の高まりが,より高次な集団活動へと発展していくものと考えられる。
 このように,生徒指導と連帯感の育成は切り離せない面があり,相互に密接に関連し合っているといえる。


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