研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -030/046page
・議題選定の過程を重視し,生徒一人一人が問題意識をもって問題解決に臨むようにする。
・議長は,少数意見にも留意して,公正にまとめるようにする。
・ほんねで話し合えるようにするとともに,話し合い活動の基本を身につけるよう助言する。
・他人の意見をよく聞き,尊重するとともに,自分の考えを深めるようにする。
・話し合いは,学級生活の改善に向けて積極的に参加し,自主的に解決するようにする。
・話し合いが,単なる話し合いだけに終わらないよう,結果を大事にし,実践を進めることができるようにする。
文化祭の合唱コンクールに関する話し合い活動の例
1. 問題
合唱の練習で,指揮を担当していたA男が,「合唱の指揮は,絶対にやらない。」と言って,音楽室を出て行ってしまった。
A男は,放課後の練習にも参加しなかったので,練習の成果があがらなかった。2. 問題の背景
○A男の心情
いくら注意をしても,本気になって歌ってくれない。我慢できないから指揮は絶対にしない。
○学級みんなの考え指揮をするということに決まったのだからそれを自分の都合だけでやめるというのは無責任だ。3. 話し合い活動にするための準備
○合唱コンクールのねらいを確認する。
○A男に自分の考えをまとめさせておく。
○A男の心情や,練習の様子などを想起させ各自に問題意識を持たせておく。
(朝の会で問題提起をさせ,帰りの会で話し合った。)4. 話し合いの結果
○A男の心情
みんなが協カをしてくれるのならやってもいい。
○学級みんなの考え
自分たちの練習の態度が悪かったことを,すまないと思っている。
○その後の練習に向けての意欲
これまで仕上げてきたのに,こんなことでざ折してしまっては残念だ。もう一度,みんなで力を合わせてがんばり,合唱コンクールで金賞を目指そう。5. 考察
A男と級友の問に,望ましい人間関係が醸成されていれば,級友はA男に協力的であったろうし,A男もまた,級友をまとめて,よりよい合唱にしようとする意欲を持ち続けることができたと思われる。
また,学級の全員が,合唱コンクールの目標や意義を正しく理解し,注意し合いながら練習に取り組むようになっていれば,生徒の一人一人が自分自身の問題として受け止め,その解決に立ち向かったはずである。
しかし,始めのうちは,A男はもとより,そのほかの生徒も相手に責任を転嫁するだけであった。
やがて,何とかして学級を一つにまとめ,合唱コンクールに参加しようという意見が出され,話し合いを重ねることによって,問題を解決することができた。
このことが学級としてのまとまりの大切さを生徒に意識させるきっかけとなり,このような問題を一つ一つ解決していく過程で,一層望ましい人間関係が培われていった。
(2) 「班ノート」と「2分間スピーチ」による相互理解
生徒と生徒,生徒と教師の人間関係の円滑化