研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -031/046page

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を図るためには,相互理解が大切である。理解の基盤となるものは,より深く相手を知るということである。
 従って,学級づくりにおいては,生徒相互の理解を深めていく手だてとして,できるだけ相手を深く知ることができるような方法を講ずる必要がある。
 そこで,これまで実践してきたことの中から「班ノート」と「2分間スピーチ」による相互理解を深める手だてについて述べてみる。

1.「班ノート」による相互理解
ア 「班ノート」のねらい
 班員が自分の意見や考えを班ノートに書き,お互いが読み合うことによって,相手を知り,相互の理解を深め,班のまとまりに役立てるとともに,学級全体にかかわる問題については,全体で話し合うなど,学級全体のまとまりにも役立てる。
イ 「班ノート」の方法
 班ごとにノートを1冊ずつ準備して,毎日交替で書くようにし,全員が休み時問や放課後などに自由に読む。
 学級担任へは,半番が翌日の朝,提出する。
 担任は,コメントを加えて午前のうちに当番に返すようにする。

「班ノート」の活用により,心を開いた例

1.問題
 それまで班ノートの順番がきても,何一つ書こうとしなかったA子が,勝手に席を替えたことで強くしかられた日に,突然,次のようなことを班ノートに書いた。

 きょうの1校時は最悪だった。先生や友達がきらいだ。 〜中略〜 わたしに班ノートなんて書かせても,ろくなことを書かないよ。あしからず。おわり
 ※先生や友だちがどうしてきらいなのですか。できれば,そのわけを書いて下さい。 印

2.問題の背景
 この問題は,単に,班ノートという枠の中で考えられるものではない。
 A子の学力の問題,生徒指導上の問題,生活環境の問題など,多くの要因が複雑に絡み合っているものと思われる。
 しかし,先に述べたように,人間関係の基盤としての相互理解ということからすると,この事例の中には,教師とA子との間に信頼関係が十分確立していないことと,A子が学級の中で孤立していることを見い出すことができる。


3.A子の変容
○A子は担任のコメントに答えるようにして班ノートに自分の気持ちや考えを書くようになった。
 このことは,A子が心を開いてきたということを表している。
○A子の文章を班の全員が読むことにより,A子は班の友達から次第に理解されるようになり,また,A子も班の友達を理解するようになってきた。
 A子の班ノートヘの記入と,それに対する担任のコメントが何回か続いた後で,A子は次のように班ノートに書いている。


 今,とっても悩んでいることがあるんです。勉強をやる気にもなれません。
 だから,今は,先生に勉強のことをいわれても,今だけは絶対にやる気がおこらないので,いうだけむだです。  あしからず!
 悩みといったら〜中略〜だからといって先生に,悩みがあるので相談にのって・・・といってるのとは違います。 〜中略〜 まあ,こんなこと書いてしまって―!すなおすぎて困っちゃうな,心の中で思ってること書いて。――では,終わります。へんなこと書いちゃった。

4.考察
 この例は,班ノートが,相互理解の1つの具体的手段となり,コミュニケーションを成立させることに役立ったといえる。
 これは一例であるが,理解がより深まってい


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