研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -036/046page
これらの活動を通して,生徒の手になる「登山のしおり」が作成された。
登山のしおり
これまで,それぞれの学級の班で話し合ったことを代表者会で次のようにまとめました。みんなで約束を守り楽しい登山にしましょう。
1.登山の目的をよく理解しよう
登山を通して心のふれあいを深め,協カし,励まし合いながら,望ましい集団行動ができるようにする。
2.登山前に準備すること
(1) 安達太良付近のことを地図などで調べる。
(2) 持ち物は次のようにしよう。
・両手が使えるように荷物はまとめて背負うようにする。
(昼食,ナイロン袋(ゴミ入れ),水筒,下着,雨カッパ,タオル,新聞紙,軍手)
(3) 服装は登山のできる服装,靴は通学用のズックにする。
3.集合時間などについて
(1) 集団行動なので時問におくれない。
・集合場所と時刻・・・学校7:00
・バス乗車時刻・・・決められた席に7:15
・出発時刻・・・7:30
4.登山中に守ること
(1) 荷物は全員背負うこと。
(2) 班ごとに行動すること。
(3) 登山道からはずれないこと。
(4) 先生の指示に従い勝手な行動をしない。
(5) 先頭と最後の先生の前や後にならない。
5.班の行動として守ること
(1) 休憩や集合のときは,班長は班員を確認して先生に報告する。
(2) 足の遅い人のぺ一スで登山する。
(3) 石を投げたり落としたりしない。
(4) ゴミは全部持ち帰る。
(5) 草木や公共物を大切にする。
(6) 各自の役割を実行する。
(7) 班として行動できるよう助け合う。
6.その他
(1) リフトは一人ずつなので時間がかかります。速やかに行動しよう。
(2) 山頂はせまいので,昼食は東側のなだらかな所でとる。
(3) 班の中でこまったことがあったら全員で協力し助け合っていこう。
3.実施段階における生徒の活動
実施段階においては,生徒がどのように活動するかが重要である。そこで,活動の概要と生徒の自主的な活動の様子を述べてみる。ア 集合の状況から
決められた集合の時刻を守れず,数名の遅刻者がいたが,その際それまでは他人への関心が低かった生徒たちの,班の構成員である遅れた者に対する心遣いがみられた。すなわち,相手を思いやることができるようになってきたといえる。イ 登山中の状況から
天候に恵まれ,元気に登り始めた。生徒は移り変わる景色や,眼下にみる景観の雄大さに歓声をあげ,なごやかに談笑しながら登り続けた。そこには,学校生活ではみられない生徒同士の心のふれあいの姿がみられた。時間の経過とともに,先頭と最後部の距離が1kmにも達し,隊形の乱れる班があり,勝手な行動をする生徒もみられるようになった。しかし,そのような時も,班長を中心として班員は,班から逸脱した班員を呼びもどし,当初の約束を確認するなどして,班としてのまとまりを保とうとする様子がみられた。
また,体力的にも個人差があり,班から遅れる生徒も出てきた。体力のないA子のいる班では,A子の荷物を持ってやったり,体のことを気遣かったりする思いやりがみられた。
このようにして山頂に着いた生徒は,登頂の喜びとともに,班員と協カし,励まし合いながら登りきることができた達成感を味わうことができたものと思われる。
しかも,以前は嫌いな人を軽視する姿もみられたが,むしろここでは,好き嫌いの別なく,登頂という目標を達成しようと励まし合い,協力する姿が多くみられ,この登山を通して,人間的結びつきが深まったといえる。
次に,生徒の反省文を参考資料として掲げてみることにする。