研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -041/046page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

5. 結果と考察

 これまでの実践は,2年生,3年生と継続して実践する学校行事を通して,連帯感の育成を図ろうとしたものである。
  また,「何を,どのようにするのか」生徒自身が考え,話し合い,決定し,実行するという,生徒主体の活動を促すことを基本とした。
 それぞれの実践を振り返り,共通にいえることは,生徒の自主的な活動の推進を図るためには,行事の計画から実施,評価に至るまで,生徒が活動する場や機会を意図的に設定する必要がある。
 すなわち,生徒の自主的な活動を促す上で大切なことは,集団の課題や問題などを,成員一人一人が自分のものとして受け止め,その解決を図ろうとする営みの中で協力し合ったり分担し合ったりするということである。
 その点,今回の行事で生徒の手にゆだねることのできる活動,あるいはゆだねることが望ましい活動を積極的に生徒に任せたことは,大きな意義があったと思われる。
 更に,重要なことは,生徒の活動の成果を待ちきれず,教師が必要以上に指導し,結論を急ぎたくなるのが一般的であるにもかかわらず,今回は結論がなかなか出ないことをもどかしく思いながらも,根気強く援助し,結果を待ったということである。

 次に,行事ごとに,生徒の活動が顕著であったもののいくつかを挙げてみると,まず,「登山」の時のしおりの作成がある。中でも,そこに記載されている守るべき事項は,生徒の自主的な話し合いによって細部が作られたことから,自分たちが作った自分たちのきまりという意識を高めることに役立ち,自ら守ろうとする態度につながった。
 このように,生徒一人一人あるいは班として1つの課題解決を目指し,生徒同士のふれあいを深めることによって,連帯感も育っていくものと考えられる。
 「集団宿泊学習」における班編成や役割の分担,更には,決まりの作成などにおいても,「登山」の時の体験が生かされ,自主的に活動する姿がみられた。
 やはり行事そのものは,質的・内容的に異なっていても,生徒が自主的に参加し,実践できる活動を意図的に用意し活動させることによって,成員同士の親和の感情や協力して成し遂げようとする態度をつくることが大切であるといえる。
 最後に,「修学旅行」の行程に生徒の自主プランによる見学を取り入れたということは,生徒の自主的活動の充実と合わせて,連帯感の育成を図る上で大きな効果があった。
 ともすると,学校行事とりわけ「修学旅行」などにおいては,外的な規制を強く押しつけたり,教師の立てた計画に生徒をただ参加させたりして,教師主導の形態になりがちである。しかもそこには,形だけの活動を強制する指導に陥り,単に行動がうまくできるか,できないかの結果だけを問題にする傾向をもっている。
 「修学旅行」における自主的活動は,目的を一つとする行動を通して,成員一人一人に,相互信頼,協働的態度,自己指導と自己管理の力を育てることに役立った。

 2年生から継続したこれらの行事を終えて,生徒がいちばん大きく変容したことは,あらゆる場面で協カ的な態度がみられるようになったことである。連帯感もこうした活動を通す過程で育っていくものと考える。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。