研究紀要第64号 「生徒指導に関する研究」 -042/046page
V 研究のまとめ
本研究は,児童生徒に連帯感を培うことが,人間性豊かな児童生徒の育成を図る上で重要な課題の一つであるという見通しに基づいて進めてきた。
そして,前述したように,原野広太郎氏の論述をもとにして,連帯感の概念を規定するとともに諸教育活動を通して,小・中学校の児童生徒に連帯感を育てる方途を見い出すため,研究協力校に実践を依頼し,事例としてまとめたものである。
紙面に限りがあるため,各校の実践の全ぼうについては,詳しく述べることができなかった点もあるが,いずれの実践も特色ある一面を有しており,参考になることが多いと考える。
連帯感を育成するにあたっては,教科,道徳,特別活動等,あらゆる教育活動が対象となるが,ここでは,各事例の重点について見直してみたい。
<特別活動を通して>
A小学校の事例からもわかるように,特別活動は,連帯感を育成する上で重要な教育活動であるといえる。
すなわち,連帯感を育成する場合には,集団とのかかわりが必要になるが,特別活動は,その目標にもあるように,「〜集団活動を通して〜」行うのであり,「〜自己の所属する様々な集団に所属感や連帯感をもち,集団生活の向上のために進んで力を尽くそうとする自主的,実践的態度を養う〜」ことからしても,目指す方向が一致しているからである。
事例のように,学級会活動における係活動と集会活動を通して連帯感を培うにあたっては,目標を児童一人一人が正しく把握し,その達成を目指し実践していく過程で,相互理解や信頼,協カなどによって人間的なふれ合いが深まることなど,大きな効果が得られるといえる。
E中学校では,連帯感を育てる場として学校行事を選び実践にあたったが,A小学校の場合と同様,特別活動のねらいからしても妥当であり,成果があったと考える。
特に,学校行事は,「〜生徒の力の及ぶ範囲内で協力して活動することによって,成就感や充足感を体験し,優れた校風を育て,連帯感を高める〜」という他の教育活動では得がたい教育的な意義がある。また,「〜それぞれの行事の実施に必要なことを種々工夫させ,責任の遂行の大切さを理解させたり,満足感や成就感を味わわせたりすることができる〜」という特質があるなど,大集団による活動の実践は,集団のきまりや秩序を守る態度,望ましい集団行動の在り方などを体得させることに効果的であるとともに,所属感や連帯感を培ったり,愛校心を高めることにつながっていく点で重要な活動であると考える。
<教育課程外の教育活動を通して>
連帯感の育成は,すべての教育活動を通して達成されるのであり,事例に見られる部活動,清掃活動などのほかにも,給食の時間,休憩時間,登下校時,業間時のそれぞれの活動など,いわゆる教育課程外の活動においても連帯感の育成を目指しての取り組みが必要となる。 C中学校の事例のように,部活動はクラブ活動とほぼ同じねらいや方法で実施されるわけで,特別活動と同様,連帯感を培う活動として適しているし,効果的であると考えられる。
すなわち,学年や学級の枠をはずした異学年集団によって,部や自己の目標達成に向かって,自主的に活動する過程で,人問関係の親密さが増し円滑化が図られることなど,連帯感の育成に密接にかかわってくるからである。
また,B小学校の場合は,日常何気なく実施している清掃活動について見直し,連帯感を育てるという視点で実践した事例である。
清掃活動は,勤労体験の一つとして位置づけること,集団登下校などのように異学年の児童の交流に役立てることなど,何をねらいとするかによって,方法にも違いが生じてくるが,B小学校のように,アイデアを生かし,児童の目主的な活動として実践していく過程で,連帯感の育成が図られるといえよう。