研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -087/126page
図 3より,専門機関と連携することができるようにするまで,専門機関の内容や手続きの方法を理解しておくことが望まれる。
○ ラポールの形成ならびに本人への指導援助
表 2 おとなしく目立たない児童生徒と話すときの心がけ(複数回答)
話すときに心がけること % ○ 子供の努力を認めてほめる 52.2 ○ 子供の話にうなずき顔を見る 45.6 ○ ユーモア,冗談を言う 43.5 ○ 子供の関心事を話題にする 40,9 ○ 子供の気持ち,感情にあった表情をする 31.9 ○ 子供の悩みごとを聞き出す 29.0 ○ 子供の言動を良い方に解釈する 11.1 ○ 自己主張することの重要性を言う 11.1 ○ 子供の声の大きさに合わせて話す 10.6 ○ もっと活発になるように教え諭す 7.1 ○ その他 4.0
図 4 指導援助の初期段階における対応
表 2より,積極的にラポール形成を図ろうとする姿勢が伺える。しかし,図 4より,指導援助の初期の段階で問題行動の原因を教えたり注意したりする対応がみられることから,十分にラポールの形成がなされないまま指導援助が行われていることが伺える。指導援助が効果的になされるにはまずラポール形成が大切となってくる。そこで受容的支持的な対応の理解が望まれる。○ 家族への指導援助の内容
図 5 親への指導援助の内容
図 5より,指示的なかかわりによって指導援助の効果が薄れる場合がみられるので,家族の心情に添った指導援助の方法の確立が必要となる。○ 学級全体への指導援助
表 3より,非社会的行動をもつ児童生徒を学級で認めようとしていることが伺えるが,今後,より積極的に本人を受け入れる学級作りが望まれる。
表 3 学級全体の指導で留意していること(複数回答)
学級全体の指導で留意すること % ○ 子供の良いところをほめる 66.0 ○ 教師と子供,子供同士がふれあう 52.2 ○ 子供の見方,考え方を大事にする 51.2 ○ 学習面だけで子供を評価しない 50.7 ○ 授業の充実に努める 39.6 ○ 日記指導に力を入れる 22.7 ○ 本人の良さが間接的に伝わるようにする 15.8 ○ 男女の仲を良くしようと配慮する 15.0 ○ 仲介役となり長所を伝達する 9.0 ○ 自分のクラスを他の教師よりほめてもらう 0.3 ○ フィードバック(図表省略)
問題行動の改善がみられない場合,ある程度のフィードバックをしている。今後,新たに資料収集や診断,指導仮説,指導援助のところまでもフィードバックすることが必要と考えられる。○ 指導援助者の姿勢
図 6 非社会的行動と反社会的行動への指導姿勢
図 6より,非社会的行動を持つ児童生徒に対してより積極的に指導援助する姿勢が必要であろう。なお,他の資料から,指導援助者自身が問題改善のための感性をより高める研さんをすることが問題の解決に大切ではないかと思われる。以上のことを総括すると,非社会的行動の改善に向けての教師の熱意や努力が強く感じられる。
しかし,具体的な指導援助の方法等に苦慮していることも伺われ,11の要点とされる事項に対する具体的な指導援助のあり方の確立が必要と思われる。