研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -088/126page
3. 非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助の手引
この手引は,先の調査でも明らかなように教育相談の進め方,特に指導援助にとって要点とされる各事項をどのように進めて行けば効果的な指導援助が可能なのかに困惑している現状をうけて,各事項の具体的な対応を効果的に進めるために作成されたものである。
なお,本手引の使用に当たっては,常にそれぞれの対応の主語に「わたし」はという言葉を初めにおいて解釈していただくとともに,対応例についてはその子供に合った言葉かけにするようにしていただきたい。なお,この手引は問題行動全般への指導援助にも役立つものと考える。● 指導援助者の姿勢
非社会的行動をもつ児童生徒に指導援助を行う場合には共感的に物事を理解できるように教師自身が努力することが必要である。
基本的対応 具 体 的 対 応 対 応 例 (1)
相談的教師として対応する1 人間的な温かさを子供に向ける。 ○ 「困ったね」「心配だね」などと子供が心配していることを気遣う言葉をかける。
○ 困っているときや心配しているとき親切にしてあげる。
○ やさしい,温かい表情で接する。
○ 「大変だね」「つらいね」などの思いやりや,いたわりのあ る言葉をかける。2 子供に好かれるように接する。 ○ 手引「ラポールの形成」の項参照
○ 好かれているかどうか子供の表情,態度などから察する。(2)
問題行動の解決に全力を尽くす1 問題行動の理解を深めるとともに問題行動への対応の仕方を身につける努力をする。 ○ 問題行動に関する図書を読む。(後述の参考図書参照)
○ 教育相談に関する研修会などに参加する。
○ 先輩や同僚の話を聞く。2 問題解決にあらゆる手を尽くす。 ○ 指導援助に最善の方法を考え試みる。
○ 十分な時間を割いて対応する。
○ 家庭訪問や電話連絡を適宜行う。
○ ときには「待つ」(見守る)。3 最後まで取り組む。 ○ 必ず解決できることを信じ努力する。 (3)
感性を磨く1 心身の健康な状態で接する。
ア 家庭や職場での人間関係を保つ。
イ ストレスがある場合は積極的に解消をはかり,気持ちの切り替えをする。○ 家族や職場の同僚を大切にし親切にする。
○ スポーツをする,音楽を騰く,本を読む,休息をするなどをしながら気分転換を図り,疲れをいやす。2 自分自身を積極的に知る。 ○ 性格検査などで自分の性格や対人関係のパターンを知る。 3 進んで教育相談に関する研修会などに参加する。 ○ 「学校カウンセラー講座」や「カウンセリング研修会」などに参加し,気づきを高めたり,問題行動の対応の仕方を知ったり,人間関係作りの仕方を学んだりする。 4 文学や音楽などにふれる。 ○ 文学書や小説などを読んだり,いろいろな人と語らったりする。
○ 楽器を演奏したり,音楽を鑑賞したりする。5 絵画や演劇などにふれる。 ○ 絵画や演劇などを鑑賞する。