研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -089/126page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

● 早期発見
 非社会的行動は問題が深刻になってから表面化することが多いので,意図的・計画的な視点をもって早期に発見することが必要である。

基本的対応 具 体 的 対 応 対    応    例
(1)
非社会的行動についての特徴とその背景を熟知する
1 本を読む。 ○ 後述の参考図書参照。
2 先輩や同僚に聞く。 ○ 経験談を聞く。
○ 専門的知識をもっている先生に聞く。
3 校内研修会や各種研修会で知る。 ○ 事例研究会,生徒指導に関する研究協議,「カウンセリング研修会」「学校カウンセラー講座」などに参加する。
4 専門機開から情報を得る。 ○ 手引「専門機関との連携」の項参照
(2)
非社会的行動に陥りやすい子供の特徴をあらかじめ把握する
1 既存の資料を見る。 ○ 手引「資料収集,診断,指導仮説」の項参照
2 諸検査を実施する。 ○ 性格検査を行い,友人関係がせまい,自己主張をしない,劣等感をもっている,引っ込み思案,神経質,き帳面などと性格の特徴を把握しておく。
○ 問題行動の予測検査や各種チェックリスト,ソシオメトリック・テストなどを実施する。
○ 手引「資料収集,診断,指導仮説」の項参照。
(3)
日常観察を通して行動の変化に気を配る
1 ごく小さなことにも気を配りながら日常観察をする。 ○ 手引「資料収集,診断,指導仮説」の項参照。
○ 気づきの視点
授業 …… 遅刻,早退,あくび,かたい姿勢,視線を合わせないなど
学習 …… 成績の急激な低下,科目による極端なアンバランスな成績,筆圧の弱々しい文字,反応の弱さなど
休み時間 …… 狐立,いじめられ.保健室の出入りなど
昼食 …… 元気なく食べる,独りぽっちで食べる,食欲がないなど
その他の学校生活 …… 欠席が増える,部活動の休みなど
家庭からの情敵 …… 友達関係の変化「疲れた,ついていけない.もうダメ」などの訴え
身体・行動 …… つめをかむ指しゃぶり,チック,体型,体重の変化
言葉づかい,語調(不明瞭,口ごもる,弱々しい,どもる,声が低い)など。

● ラポールの形成
 問題行動の改善に当たって,指導援助者の助言やカウンセリングの効果をあげるためには,本人や家族との間にラポール(又は,リレーション)の形成が必要である。

基本的対応 具 体 的 対 応 対    応    例
(1)
受容的,支持的に接する
1 子供の話し方に合わせてよく聴くようにする。
 ア 子供の話を最後まで聞く。
 イ 子供の話を批判や審判をしないで聞く。
 ウ 子供の話の意図や気持ちを聴きとる。
 エ 子供の話にうなずき,顔を見つめ,体を乗り出して聴く。
 オ 子供の感情;気持ちに合った表情で聴く。
○ 訴えたい,話したいという気持ちを大事にしながら,途中で言葉を遮ったり.口をはさんだりしないで,子供の言いたいことをよく聴く。「でも,しかし」を使わないで聴く。
○ 「それはおまえが悪いからそうなったんだろう」とか「君の考え方がおかしい」などと話の事柄を評価して説教・説得しながら聞くのではなく,本人の話をそのまま聞く。
○ からかわれたので,おもしろくない気持ちなのか,いじめられていたので,学校に行きたくないと思っている気持ちなのかと思いながら聴く。
○ 子供の話のふしぶしに「うーん,そう」とか「そうなの」といった言葉をはさみ,その都度顔をそっとやさしく見つめながら全体でうなずき,次第に体を子供の方に乗り出して話を丁寧に聴く。
○ 子供がうれしいと話すときは,子供のうれしさを味わいながら,その表情をして聴く。悲しいと話しているときは,子供の悲しみを分かち合いながら,悲しそうな表情をして聴く。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。