研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -091/126page

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● 資料収集,診断,指導仮説
 非社会的行動の改善にあたっては,より効果的な指導援助をするために,多次元的な資料収集をし,それに基づいて診断を行い,指導仮説を立てて計画的に指導援助を行う必要がある。
基本的対応 具 体 的 対 応 対    応    例
資  料  収  集
(1)
資料収集の計画を立てる
1 ある程度,問題行動の背景を予測して資料収集の計画を立てる。 ○ 背景の予測の例
・ 不登校 …… 対人関係を上手に形成できない性格ではないか? 親の養育態度に問題はないか? 友人との間にトラプルはなかったか?
○ いつ,どこで,誰が,どんな内容の資料をどの程度収集するかの計画を立て,表などにまとめる。
(2)
既存の資料からの資料収集をする
1 学校にある資料から,問題行動につながる資料を収集する。
 ア 指導要録の前学年までの記録を見る。
 イ 学習成績記録票を見る。
 ウ 現在までの出席簿を見る。
 エ 学級経営誌を見る。
 オ 現在までの健康記録表を見る。
 カ 家庭環境調査票を見る。
 キ 生徒指導票を見る。
 ク グループ日誌,生活記録表などを見る。
 ケ 絵画や作文などを見る。
○ 知能と学力の関係を見る。成績の変動を見る。性格.行動の特徴をとらえる。
○ 成績の急激な変動かないか調べる。
○ 特定の曜日の欠席の有無を見る。遅刻や早退,月曜日や連休明けの欠席の有無を見る。
○ 現在まで実施した各種の調査や検査を見る。家庭訪問記録を見るなど。
○ 身体的な特徴や健康状態をとらえる。
○ 家族構成,家庭の経済状態,家庭の物的環境,親の養育態度,生育歴などをとらえる。
○ 現在までの行動の特徴,変容の様子を見る。
○ 興味,関心,悩み,交友関係や家族関係などをとらえる。
○ 絵画から子供の情緒面,知能の発達状況などをとらえる。
  作文から子供の悩みや不満,価値感などをとらえる。
  テーマを与えた作品(例えば“私の家族”など)から,親子関係や交友関係などをとらえる。
(3)
観察により資料の収集をする
1 視点を明確にして観察する。
 ア ことばづかい,話の内容をとらえる。
 イ 表情を観る。
 ウ 声の調子をとらえる。
 エ 動作,行動を観る。
○ ことばづかい …… 口数が少ない,ていねい,なげやりなど
○ 話の内容 …… 話の一貫性,陰語の使用など
○ 表情 …… 暗い,硬いなど
○ 声の調子 …… 弱い,ふるえる,小声,恥ずかしそうなど
○ 動作,行動 …… 緩慢,萎縮,ぎこちなさなど
2 場面をきめて観察する。 ○ 場面に応じ,それぞれの視点について,状態,程度,頻度などを観察し記録する。
 ・ 朝会った時,授業中,休み時間,放課後などそれぞれの場面について観察する。
3 観察したことの意味を考え,さらに観察をする。 ○ 以前の様子や他の子供の様子との比較をする。
○ 次のようにして観察を深める。
 保健室に頻繁に出入りする子
  → (友だちと遊べないのではないか? 対人関係に不安があるのではないか? などと考えて)
  → 友だちと遊んでいる様子をさらに深く観察する。
(4)
他の教職員,家族などから資料を収集する
1 他の教職員から子供の情報を得る。
 ア 機会をとらえて,他の教師からの情報を得る。
 イ 学年会などで定例的に子供について話し合う機会を持つ。
○ 「私のクラスの○○は,先生の授業ではどんな様子ですか?」
  「私のクラスの○○は,今○○の状態なのですが,先生が担任されていたころはいかがだったでしょうか?」
○ 「私のクラスの○○は,今○○なので心配なのですが,先生方でお気づきになられたことは何かありませんか。」


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