研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -098/126page
● 家族への指導援助
非社会的行動は家族の養育態度や家族関係に起因することもある。問題行動の改善のために指導援助する際には,家族自身に気づかせる指導援助が必要である。
基本的対応 具 体 的 対 応 対 応 例 (1)
ラポールを形成する1 親としての立場を尊重し,信頼感安心感を与える。
ア 敬意を表した言動をとる。○ 丁寧な言葉遣いをする。
○ 真しな態度をとる。
○ 教えてやる,指導するとうけとられない言動をとるようにするとともに,一緒に考えていこうとする姿勢を示す。
○ 家族へ感謝,お礼,ねぎらいなどの言葉をかける。
・ 「あ,そうですか。それはありがとうございます」「そうしていただきますと助かります」「感謝申し上げます」
・ 「大変だったでしょう」「お忙しいところおい出いただきまして本当にありがとうございます」
・ 「お忙しかったでしょう。突然お伺いしまして。本当に申し訳ございません」イ 親の話を傾聴しながら,気持ちを受容し,支持する。 ○ 「そうですか」「なるほど」「な−るほど」とうなずきながら十分聴く。
○ 親の考え,感情にべースを合わせて聴く。
○ 「それは大変ですね」「それはど心配ですね」「〇○は,○○というお気持ちなんですね」「○○とお考えになるのは当然ですね。」などの言葉を返し,親の気持ちを支持する。
○ 「○○することはだめですね」「そういうことは間違ってますよ」など親のしたことを否定する言動は慎む。ウ 親の言動をよい方に解釈して伝える。 ○ 「夫婦で子供のことでけんかになることがあるんです」を「子供さんのことをご夫婦でご熱心に考えておられるのですね。とってもすばらしいご夫婦ですね」また,「うちの子供はのろいんですよ」を「物事に対しいつも深く考えて行動するお子さんなんですね」などの言葉を返し,肯定的に受け止める。 エ 親と一緒に考えていこうとする態度を示す。 ○ 「力不足ですが,お子さんのために私のできる限りのことをしたいと考えております」「どうでしょう。ご一緒に考えて行きたいのですが。いかがでしょうか」
○ 「もしお話しづらいことがありましたら話さなくとも結構ですよ」オ 好感を与える身だしなみや言動をとる。 ○ 服装や髪型などに十分配慮する。
○ 落ち着いた態度と柔和な表情で話をしたり聴いたりする。
○ 最初は時候の話や世間話などを取り入れ雰囲気を和らげる。
○ 「お身体の調子はいかがですか。この前お会いしたときは,あまりお元気がなかったので」などの相手を気遣う言葉をかける。
○ 相手のペースに合わせながら間をとりながら質問をする。
○ 親から決めつけたと思われたり不快感を与えたりするような質問は避ける。カ 誠実に対応する。 ○ 学校であったよいことをその都度伝える。
・ 「今日の掃除の時間すごく熱心に作業したんですよ」
○ 学級通信などを通して,子供のよい所,先生の考え,学級の雰囲気などを知らせる。
○ 空き時間などを利用して家庭訪問や電話連絡などをする。
○ 自分の落度があったときには謝る。キ 親に来校を求める時や家庭訪問するとき失礼のないようにする。 ○ 話し合う時間,場所,話し合いたい人,話し合う内容などをあらかじめ決めて親の了解を得る。
来校を一方的に求めるようなことをせず,親の都合に合わせるようにする。
・ 「お忙しい所申し訳ございませんが,お子さんの○○のことについてご都合のよい時間にお話をお伺いしたいのですが。差しつかえないでしょうか。もしよろしければ学校までおいでになっていただけないでしょうか。もしご都合が悪ければいつがよろしいでしょうか」