研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -100/126page
● 学級全体への指導援助
非社会的行動をもつ子供の多くは,自分から孤立しているか集団に受け入れられていないことが多く,一般的に緊張していて自由に伸び伸びと学校生活をおくってはいない。その子供を受容できる学級集団を育てることが必要である。
基本的対応 具 体 的 対 応 対 応 例 (1)
本人を自由に伸び伸びと行動できるようにさせる1 思いやりの気持ちを育てる。
ア 教師自身が思いやりの気持ちをもって接する。
イ 思いやりの大切さを気づかせる。
ウ 思いやりを体験させる。
エ 子供の思いやりの行動を認める。○ 「かぜをひいてつらかったでしょう」「それでは,痛かったね」等の相手をいたわったり,思いやったり,痛みを分かるような言葉を常日ごろかける。
○ 思いやりがあったために幸せになったことを,テレビ,ラジオ,新聞などの中から選び,話題にし話す。
○ 思いやりの行動をテーマにしたロール・プレイングをする。
○ 思いやりを示した子供に対して「○○をしたことは,○○さんはきっとうれしいと思っているよ」「いいことをしたね」などと認める。2 本人自身の気持ちなどを集団に理解させる。
ア 本人の言動を肯定的に伝える。
イ 本人の心情を理解させる。○ 「さそっても遊ばないし一緒にしないんだ」と言う子供に対して,「多分,○○さんは,迷惑をかけないようにと思って独りでいるんだね」と受け取って話をする。
○ 話せない子供 … 「話そうと思っているのに,今は話せないんだよ」
チックの子供 … 「自分でやろうとしてやってるんじゃないから,気にしてるのかも知れないよ」
不登校の子供 … 「釆たいと思っているのに何かがあって来られないんだね」などと気持ちをくんで話す。3 意図的・計画的に集団への参加を図る。
ア 席順やグループ編成などを配慮する。○ 友人関係のつながり(ソシオメトリック・テストの活用など)を調べ本人が話しやすい人,受け入れやすい人,本人に話しかけやすい人と一緒にグループを作ったり席順を決めたりする。また,本人にかかわる子供を補助できる子供までも配慮して決める。 イ 本人の特性を生かし,学級のみんなにも認めさせる。 ○ 本人が,できる,やりやすい,好きな役割をさせる。
○ みんなの前で「ありがとう」「助かったよ」「よくできたね」などとさりげなく言う。
○ この子供だけでなく他の子供にも同時に言う。ウ 本人を受け入れそうな集団に誘い入れ,遊びなどの活動に加える。 ○ 先生自身がグループに入るときに,「おもしろいから」と言ったり,また,先生と遊びながら,「ほら,ほら,来てみな」「ほら,やってみよう」「一緒に遊ぼう」などと声をかけたり,手を引いたりしてさりげなく誘う。
○ 先生自身がグループに入っているときは,本人を受け入れそうなグループの子供に誘わせたりする。
○ 遊びながらも常に,本人に気を配りながら,「よくできた」「おもしろかったね」「たいしたもんだよ」などと声をかける。
○ 他の子供にも同じ言葉かけをする。(2)
学級全体の人間関係作りをする1 お互いが.理解し合い,受け入れ合うようにさせる。 ○ 1対1の関係で話し合わせる。次から次へ変えて話し合わせる。
1対1のペアを2ペア組んだり,グループを増やしたりし,話しやすい,自己紹介や,好きな食べ物,色などを話題にしお互い同士を十分に知り合うような機会を持つ。2 親ぼくを深める機会を作る。 ○ 簡単にできるゲーム・歌などのレクリエーションや誕生会,スポーツ大会などを先生も一緒に行い楽しむ。 3 仲間意識をもつようにさせる。 ○ 学校行事(学習発表会,文化祭,スポーツ大会,音楽会等)に教師も一員となって率先して参加するが,計画や活動の主体は子供におく。
○ 学級独自の企画で集会活動や行事などを実施させ,学級がまとまるように補助する。4 教育活動において,教育相談的手法を生かす。
ア 教育相談的な授業を展開する。○ 子供の発言に対して,考え方,意見をまず,「なるほど」「うん,うん。」とうなずいて聴き,さらに,「○○と言いたいんだね」「○○のような考えなんだね」「○○と言うことかな」と言う言葉を使って受け止める。
○ 初めから,「よく聞いてないから」「やっぱりできない」などとは言わないで子供の発言を大事にする。イ 教育相談をする。 ○ 機会をとらえて1分間,3分間などの面接を多くし教師と子供の関係をつくる。絶対にしかったりしない。