研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -107/126page
「学校へ行ったら話してこいよ」
「家で話せるんだから,学校でも話すんだよ」
・ A子に自信を持たせるようにするため,できるだけ良いところを見つけてほめるように頼んだ。
この結果,家庭におけるA子の行動は自信に満ちたものになり,表情も明るくなってきた。そして,ゆとりができたのか弟に対してもやさしくなってきた。8. 指導援助者の姿勢
(指導援助者は教職3年目の男性)
・ かん黙についての理解を深めるため,参考書や県教育センターの資料などを読んだ。
・ 担任と児童,児童相互の人間関係を深めるため,グループ・エンカウンターに関する参考図書を読んだ。
・ 児童との心の交流の在り方について知るため,交流分析に関する参考図書を読んだ。
・ 県教育センターでの「学校カウンセラー講座」に参加し,カウンセリングの理論と実際を体験的に学習した。この成果を授業や子供たちとの接し方に生かした。
・ 担任の児童へのかかわり方について,児童からフィードバックしてもらった。
これについては,以下のような調査をして自分の言動について振り返りながら子供たちと接していった。
うれしかったこと いやだったこと
子供の記録を見ると,うれしかったこととしては当然のことながら,ほめられたことが多かった。しかし,中には注意されたことでよかったとしている子供たちもいる。これは,感情的な怒り方でなく,相手を思ってしかっている気持ちや態度があったからだろう。担任の肯定的なかかわり方や受容的な接し方が生かされたようである。
A子に対する担任のかかわりは,意図的ながらさりげないものであった。しかし,A子の心に迫るものであったことが,次のA子の記述からも伺える。
・ 電話で先生と話が出来たこと。私のことを心配してくれているとわかってうれしかった。
・ 先生がいろいろな用事を頼んでくれるので,いつも先生と一緒のような気がした。
・ 音楽の時間はとても楽しい。それは,大好きなピアノが弾けるし,友達も協力してくれるからです。
・ 先生が一緒に,みんなで遊んでいるところへ連れていってくれてみんなと遊べて楽しかった。9. 考察
かん黙の子供に対する指導援助は非常に難しいが,A子の場合,改善が見られたのは次のような対応がなされたためと考えられる。
1 話すことに対する心理的な圧迫感を与えなかったこと
2 ラポールの形成を図ったこと
3 学級全体の人間関係を調整したこと以上のような指導援助は「非社会的行動に対する指導援助の手引き」に基づくものであった。