研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -110/126page
6. 指導仮説
(1) 基本方針
1 本人とのラポールを形成し,言動を肯定的に認めて自信を持たせる。
2 学級では,本人を理解するような雰囲気をつくり,緊張感を持たせないようにする。
3 家庭では,本人に対し受容的に接し,家族の中における孤立感の解消を図る。(2)具体的な指導計画
1 本人に対して
ア チックのことについて注意したり,意識させたりしないようにする。
イ 生活や授業の中で肯定的な働きかけを多く出すようにし,信頼関係をつくる。
ウ 受容的,支持的に接する。
エ 良い点や出来るようになったこと,また,努力したことなどを積極的に取り上げてほめ,自信を持って行動できるようにさせる。
オ 部活動の中で本人を積極的に認める。
2 学級に対して
ア チックについて,からかったり,注意したりしないようにさせる。
イ 友達同士がお互いに励まし合うようにさせる。
3 家庭に対して
ア 両親へのカウンセリングを行い,本人への家族のかかわり方について次の点について指導援助をする。
・ 父母,祖父母がやさしく接し,しつける場合は本人に納得させながらする。
・ 家庭での憩いの時間を設け,本人が家の中でのびのびとできるように配慮する。
イ 家庭の様子を学校に連絡させる。
4 専門機関との連携
ア 県教育センターと定期的に連絡をし合う。
イ 県教育センターとの分担を決めて進める。
・ 学校 : 本人及び両親に対する指導援助
・ 県教育センター : 心理検査の紹介,解釈7. 指導援助の経過
(1) ラポールの形成について
1 日常生活におけるふれ合いを通してのラポールの形成
朝や帰りの時,また,休み時間本人と接する時,随時,努めてにこやかに「おはよう,きょうはとても暑くなりそうだね」,「元気そうだね」,「今日はがん張ったね」などと声をかけた。また,「お盆に亡くなったひいじいちゃんやひいばあちゃんのお墓参りに行くのかい」というように本人が関心を持っていることについて話しかけるようにした。
学年始めのころは,担任が話しかけるとめんどうくさそうな素振りをしたり,しかられるのではないかといったような警戒のまなざしをしながら後ずさりをすることが多かった。その後,次第に警戒心もなくなり,声をかけるとにこにこしながら近づいてくるようになってきた。そして,休み時間等に本人から担任に話しかけてくるようになってきた。
2 学級会活動を通してのラポールの形成
本人が前期の学級委員に推薦されてなったが活動に自信がなく困っている様子が伺えた。そこで,本人を手助けしたり,ほめたりして自信を持たせるような働きかけをした。その結果,本人は自分が因っていることに対して先生が本気で考えてくれているという感じを抱き先生との人間関係がより親密になった。
( T : 担任, A : 本人)
A 「先生,今度の学級会で僕が司会するんですか」
T 「そうだよ,どうしてなのかな・・・」
A 「・・・ええ・・・あんまりやりたくないんです」