研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -111/126page
T 「やりたくない,どうしてかな」
A 「人前で話すのが苦手なんです」
T 「大丈夫だよ,行き詰まったら先生が助けてやるよ 」
A 「でも・・・心配だな・・・」
T 「最初から誰でもうまくいかないんだよ,大丈夫だ,先生がついているから」
初め,担任からの指示を待ち,司会もびくびくして自信がなくいやがっていたが担任が支えているうちに次第に自信を持ってきた。
3 カウンセリングによるラボールの形成
T (みんなが帰ってしまって誰もいない部屋で)「今日の練習は本気だったね。ところで,この前君は,人前に出るのがいやだと言っていたがそのことについてちょっと一緒に話してみない」
A 「・・・ええ」
T (リード)「いつも人前で話すのがいやなのかな?」
A 「ええ,そうなんです。いやなんです」
T (受容,繰り返し)「う〜ん,そうか,いやか」
A 「ええ,いやでいやでしかたないんです」
T (受容,支持)「そ〜う,それでは,学級委員になって,人の前に出るのはつらいよね 」
A 「そうなんです。顔がこわばったりするんです」
T (受容,支持)「なるほど,それは大変だよね,いつごろから?」
A 「確か小学校のころからかな」
T (受容,支持)「そう,随分前からなんだね。ずっとつらい思いをしてきたんだね」
途中略
T (リード)「それでは,家の中でも緊張したりすることなんかあるの?」
A 「ええ,よくおこられるもんですから,みんなに」
T (受容)「そ〜う,誰も味方になってくれないの?」
A 「みんないやなんです。訳もなくしかるんです」
T (受容)「そうなの」
A 「死んだひいじいちゃんやひいばあちゃんはいつも味方してくれたし,僕がしかられるとかばってくれたんです。今,だれも僕の味方になってくれる人いないんです 」
T (受容,支持)「そ〜う,それは,つらいよね」
A 「うちの人たちは,僕が何かするとすぐだめだってしかるんです。僕何やってもだめなんです。だから,僕,うちの人みんな嫌いなんです。どこか遠くへ行きたいんです」
T (受容と支持)「なるほど,そ〜なの・・・それでは嫌いになるよなあ。(ノーマライジング)それじゃ,どこかへ行きたい気持ちになるよね」
以上のように,本人の悩みを聴き,情緒の安定を図る面接を数回実施した結果,本人とのラポールがさらに深まった。
4 運動を通してのラポールの形成
昼休みなどの休憩時間には,努めて本人を含む生徒達と一緒に遊んだり,運動したりして過ごすようにした。また,本人の部活動の顧問であることもあって,励ましながら部活動に努めさせた。そして,少しでも上手になったり,できるようになったときは積極的に取り上げて本人をほめたり,時にはみんなの前でほめるようにした。