研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -113/126page

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事例 3
早期発見
資料収集,診断,指導仮説
指導体制

を中心にまとめた事例

− 孤立状態からみんなの仲間に入れるようになってきた中学生 −

1. 主訴

   集団不適応

2. 対象

   中学校 1年 女子

3.問題の早期発見並びに問題の概要

(1) 問題の早期発見
1学年担任のA教諭は,互いに助け合うクラスづくりを考えた。そのために,まず,常日ごろから生徒とのふれあいを多くし,一人一人をよく観察して生徒理解を深めることを心がけていた。
 B子は,中学校入学以来,口数が少なく,クラスではいつも目立たない存在であった。担任のA教諭がそんなB子を気にかけるようになったのは,昼休み時間に,図書室で一人読書をしているB子の姿をよく見かけるようになったからである。
 「いつも熱心だねきみは,本が好きなの?」そう尋ねても,B子から元気な返事が返ってくることはなかった。たまにクラスの女子生徒が出入りしても,声をかけ合うこともなく過ごしていた。
 もしかしたらB子は楽しく行動を共にする友達をもたず,クラスの中で孤立していて,昼休みになるといつもこうして,一人図書室で時間を過ごしているのではないのだろうか。そんな懸念が的中したのが,席替えのため実施したソシオメトリック・テストの結果であった。(5月実施)

 被選択数  2   被排斥数 19
 相互選択数 1   相互排斥数 5

 被排斥数の示すとおり,B子はクラスの多くの生徒から排斥され,孤立状態にならざるを得なかったのである。
 次の絵は,“生活を描く”というテーマでクラス全員に描かせたものである。生徒の多くは友達との学校生括を題材として描いたのであるが,B子は,家のなかで一人,ジグソーパズルをしている自分を措いたのである。A子をとりまく状況を察知すると,この絵にも,B子の現在の心境が語られているように思えてならなかった。
“生活を描く” B子の絵
 6月に入ると,B子の孤立化が深まるばかりか,体の不調を訴えて早退することや,さしたる理由もなく欠席することが目立ち始めた。このままでは,不登校に陥ることが十分予想されたので,早急に対応する必要に迫られた。

(2) 問題の概要
 ・ 集団から孤立し,友達と交わらず,一人で過ごすことが多い。
 ・ 理由のはっきりしない早退や欠席がときどき見られる。


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