研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -114/126page

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4. 資料

 B子が集団から排斥され,孤立しているのはどうしてだろう。
 友達から嫌われるきっかけとなるような出来事が中学校入学後にあったからだろうか,それとも,小学校時代から孤立状態が継続しているのだろうか(クラス全員が同じ小学校出身),B子を取り巻く生徒たちに原因があるのだろうか,それとも本人自身の性格が大きな原因となっているのだろうか,あるいは背景となるB子の家庭に大きな問題が隠されているのだろうか。
 このように問題の原因として浮かび上がったことについて確かめていくため,A教諭は計画的に資料を収集していった。
計画的に資料を収集

(1) 既存の資料を通して
  • 小学校指導要録抄本から
     〔学習について〕
     成績は 2 ないし 3 の段階,運動能力が低く体育を特に苦手としている。
     〔性格,行動について〕
     友達が少ない,内気で引っ込み思案である情緒が不安定で,急に泣き出すことがある。
  • 健康調査表,出席簿(中 1,1 学期)
     斜視,近視, 早退 4(頭痛,腹痛), 欠席 8日(かぜ,頭痛,腹痛)
  • 家庭環境調査表から
     〔家族構成〕
    〔家族構成〕

     既存の資料から,性格は内気で引っ込み思案であること,友人関係の少なさは小学校時代から引き続いていること,学力は全般的に低いこと,斜視という身体的なハンディキャップを背負っていることなどが分かった。

    (2) 観察を通して
     他の教諭にも協力を依頼してA子の様子を観察した結果,次のようなことが新たに分かった。
     1 授業中は自分から発表することが見られず,指名されても聞き取れないような小さな声でしか話せない。体育の授業は見学することが多い。
     2 ささいなことで友達とトラブルを起こしやすい。

    (3) 面接を通して
     B子が一人でいる機会をとらえ,学校生活や家庭生活についてそれとなく聞き出すようにした。
    担任 「きみのお父さんにはまだお会いしたことがないんだけど,明日の懇談会にはこられるかな」
    B子 「……………………」
    担任 「いつも忙しいのかな」
    B子 「知りません」(きつい調子で)「お母さんじゃいけないんですか」
     B子は,自分の父親に対してあまりよい感情を抱いていないように感じられた。


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