研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -115/126page

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担任 「班の代表になったね」
B子 「………わたし,いやなんです」
担任 「いやなのにどうして」
B子 「無理やりなんです,…… C子さんたちが勝手に決めちゃって ……」
 友達関係について聞いていくなかで,B子が嫌う生徒や,比較的B子に親切な生徒について知ることができた。
担任 「もうすぐ中間テストだね,勉強してるかい」
B子 「いいえ,ちっとも」
担任 「どうした,力があるんだからがんばれよ」
B子 「どうせわたしなんか何をやってもだめなんです」
 B子が,勉強や運動に対して劣等感を持っていること,「何をしてもだめなんだ」という否定的な自己イメージを強く抱いていることが分かった。

(4)検査を通して
 これまで得た資料だけでは,B子が友達から排斥され,孤立している理由がよくつかめないので,心理検査を実施し,B子の内面を探ってみることにした。
○ YG性格検査から
 ・ 動作が不活発で,積極的な態度がみられない。
 ・ 自己中心的で人とうちとけない。
 ・ 神経過敏でまわりのことを気にしすぎる。
 ・ ものごとを暗く悲観的に考え,自信をなくしふさぎこむ傾向もみられる。
 B子の以上のような性格は,ソシオメトリック・テストでクラスの生徒がB子を排斥する理由(ちゃんとまざってくれない,自分勝手である,はっきりしてない,性格が暗い,すぐにおこる)とも一致しており,集団から孤立する大きな原因となっているものと考えられた。

(5) 家庭訪問やその他の方法を通して
 B子の孤立しやすい性格特性の背景には,家族の人間関係や両親の養育態度の問題があることも考えられるので,家庭訪問や保護者会の機会にB子の家庭環境に関する資料を収集することにした。
○ 家庭訪問から
〔B子の生育歴〕
 ・ 幼いころより一人遊びが多かった。
 ・ 両親共働きのため,下校後は親せきの家で過ごしていた。
 ・ 母親に甘えることが多かった。
〔両親の性格及び養育態度〕
 母親は,その話しぶりから,もの静かで,まじめな性格がうかがえた。B子の養育に関しては,B子が体の具合の悪さを少しでも訴えるとすぐに欠席させたり.家事の手伝いを全くさせないことなどから過保護の面が強く感じられた。
 なお,父親については不在がちというくらいで詳しくは知ることができなかった。
○ 保護者会から
 家では友達や勉強のことについてB子から話すことは少ない。勉強をするように言うと母親に対して反抗する。わがままを言っては母親を困らせることが多い。父親との会話はほとんどないことなどが分かった。
○ 他の教諭から
 A教諭はさらに,B子の姉や兄を担任した教諭に家庭訪問や保護者会からだけではつかみきれない家庭の事情について尋ねてみた。
 その結果,B子が小学3年のころから父親が外に好きな人をつくり,両親のいさかいが絶えなかったこと,3年前に一度離婚ざたになりかけ,このときはB子の兄も部活動を急にやめたり,早退や欠席を繰り返したこと,現在でも父親は自宅にあまり帰ろうとしないなどの事実を知ることができた。

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