研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -116/126page

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5. 診断

 以上のような方法で得た資料から,B子の問題行動の主訴を「集団不適応」ととらえた。
次に,多次元診断マトリックスを作成することによって資料相互の関連づけを図り,問題行動の背景を構造的に理解するようにした。さらにこの診断マトリックスをもとに,B子の集団不適応の素因と誘因が何であるかを考え,B子が孤立状態に陥るまでのプロセスを明らかにしていった。

    (多次元診断マトリックス)
(多次元診断マトリックス)
    ※ 関係の詳細については省細

素   因
・ 常に安定しない心理状態,否定的イメージ
・ 孤立しやすい性格(内気,引っ込み思案)
・ 排斥されやすい性格(自己中心的,わがまま)など
 + 
誘  因
・ 友達とのトラブル
・ 友達からの排斥
       など
 → 
問題行動
 
集団不適応
 
  ↑ 素因を形成するもの(両親の不和,過保譲,過干渉の養育,斜視,運動が苦手など)

 B子の両親は,B子が小さいころから不仲の状態であったため,母親の関心はB子たち子供に強く向けられるようになった。その結果母親はややもすると過保護的となり,そのことがB子の性格を自己中心性の強いものに形成していく要因になったものと思われる。
 また,両親のいさかいや別居は,B子に不信の念を抱かせ,情緒を不安定にし,神経過敏で,対人関係におくびょうな性格をつくりあげていったものと思われる。
 このためB子は,学校生括においても常に情緒が安定せず,暗くふさぎこんで自分の殻に閉じこもったり,友達に反発してトラブルを起こしたりして,次第に友達から排斥され,孤立を深め集団不適応に陥っていったものと考えられる。


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