研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -118/126page
事例 4
・ 本人と家族への指導援助
・ 指導援助者の姿勢を中心にまとめた事例
− 夏休み後の不登校から立ち直った高校生 − 1. 主訴
不登校2. 対象
高等学校 1年 男子3. 問題の概要
<1学期>
・ 1学期の中間テスト後より授業中ノートを取らない,いねむりをするなど学習意欲が薄れてきた。また,遅刻が週に1〜2回見られた。
<2学期>
・ 9月当初,友人2人とオートバイの無免許運転で補導され家庭謹慎の指導を受けた。家庭謹慎解除後より腹痛を理由に遅刻や早退が見られた。また,連続的な欠席をするようにもなった。4. 資料
<1学期の問題行動の指導援助に関して収集した資料>
(既存の資料や日常の観察から): 性格は引っ込み思案で友人が少なく学級にとけ込めていない。また,成績は中の下である。
家族は,父母(会社員),本人(長男),弟(中2),妹(小6)
<2学期の不登校の指導援助に関して収集した資料>
(本人や父母との面接から): 1学期の成績不良について母親はことあるごとに文句を言い,父母は本人の学業不振のことでよくけんかをする。
夏休み中,中学時代の友人と遊び楽しかったが2学期になり登校しても級友がなく学校がおもしろくなかった。
夏休み後は,帰宅すると中学時代の友人に誘われて遊んでばかりいた。
バイクの事件後,級友がさらに遠く離れたような感じがした。また,母親がことさら口うるさくなり文句を言うようになった。
高校進学は中学の学級担任と母親に説得されて決めた。将来のことは決まっていない。
亡くなった祖父母は本人に過保護であった。父親は温和で仕事熱心であるが本人へのかかわりは放任,消極的拒否型,母親は勝気で教育熱心で,本人へのかかわりは過干渉,拒否的,溺愛,期待型である。5. 診断(2学期の不登校に関して)
級友が少ないこと,学業が不振なこと,家庭内がおもしろくないことなどのため情緒が不安定になっているところに家庭謹慎で欠席したことがきっかけで不登校になったものと考えられる。この背景には本人の引っ込み思案の性格や消極的な高校進学がある。