研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -120/126page

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T (受容と明確化)「そ−う,それでは家の中にいてもおもしろくないし落ち着かない・」
A 「そうなんです,いつもイライラして・・」
T (受容と明確化)「そ〜うなの,それでは何か考えようとしても考えられないでしょう」
A 「はい,いつも何か周りでゴチャゴチャして考えようにも・・・」
T (ノーマライジングと気づきを深めるため)「そうだよ,周りがゴチャゴチャしてれば考えられないことは当然だよ。私だって同じような立場なら君のようになるね。それにしても何か考えようという気持ちはエライよ・」

 以後,数回家庭訪問をした。本人は学校生活や家の中がおもしろくないことなどの話をした。これを受容,支持,繰り返し,明確化,ノーマライジングなどで対応した結果,情緒が安定して落ち着いて物事を考えられるようになった。

T (将来へ目を向けさせるため)「ところで,この前,君は機械関係に興味があるといってたけど将来のこと考えてみた?」
A 「ええ,考えてはみたんですけど・・良く分かんないんです・・・」
T (リード)「良く分からないというと・・」
A 「ただ興味があるといってそれが将来の何と結びつくのか」
T (明確化)「なるほど,具体的な仕事の内容が良く分からないため決めかねるということ」
A 「ええ,そ−なんです」
T (提案)「それでは,お父さんにでも仕事のこと聞いてみたら?」

 以後,数回の面接で次第に自動車整備の仕事をしてみようかなと考えを持ち始め,高校卒業後専門学校に進みたいという希望がでてきた。

(2) 父母への指導援助

<不登校に対して>
 (P : 父母,F : 父,M : 母,T : 学級担任)

T (学校で敬意を表して)「お忙しい所おい出いただき申し訳ございません。ありがとうございます。A君どうです? 最近」
M 「はい,全く! 腹が痛いとか言ってサボッて申し訳ございません。このまま休んでたら勉強がわからなくなるからって強く言って聞かせるんですが・・言うことを聞かなくて・・」
T (受容と支持)「そ〜ですか,それはお母さんもお困りですね・・・」

 母親は本人の欠席に対する不満を述べた。学級担任は受容,支持,繰り返しでひたすら傾聴した。

T (父親の考えを把握)「ところで,お父さんはどう考えていらっしゃいますか?」

 父親は困ってはいるが自分のことは自分で決めさせた方が良いと言う。

 父親の言動に対して母親は父親の無責任を非難し,父親は母親の過干渉をなじり互いに言い
合った。

T (父母の考えを肯定的に解釈)「なるほど! そ〜ですか!素晴らしいですね,お二人とも! それ程までにA君のことを真剣に考えお互い意見をぶつけ合えるとは! お父さんはA君をじっと見守ってやることが一番の教育と考えていらっしゃるし,お母さんは何とか手助けをしてやらなければA君はかわいそうと思っていらっしゃるし・・・なるほど・・・」

 父母のかかわりを否定せずお互いが一生懸命努力していることを認めた。父母は次第に落ち着き自分たちのかかわり方を振り返るようにな

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