研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -045/137page
のと考える。このことがやがて自分自身の在 り方と生き方を主体的に選択でき,独自性と 柔軟性を兼ねそなえた人間の育成につながる ものと考えた。
そのためには,知識面だけでなく見方や考え方,感じ方,興味・関心,学習速度などの違いにみられる個人差に配慮し,個性的で確かな判断力,表現力,創造力,思考力等の能力を高める視点から,指導内容・方法を個を見つめたものに改善することが必要であると考えた。
3.「基礎・基本」と「個性」のかかわりについて
本研究では,学習指導の場面における基礎的・基本的な内容と個性とは,それぞれが有機的関連の中にあって,初めて定着し仲良するものと解釈した。
そのためには,その両者に深く関与する判 断力,表現力,創造力,思考力等の能力を重 視することが重要であると考える。そしてこ れらの能力( * )をジェクタビリティと呼ぶことに した。児童生徒一人一人の「よさ」を生かし 伸ばし,基礎的・基本的な内容を定着させる 上で,このジェクタビリティは重要な要因に なってくると考えた。
*ジェクタビリティ (Jectability):造語 judgment(判断),expression(表現) creation(創造),thought(思考)のそれ ぞれの頭文字に−ability(能力)を合成した ものである。本研究では,これを判断力, 表現力,創造力,思考力等の能力と規定し て用いる。
(3)研究の仮説
本研究では,研究理論に基づいて次のような全体仮説を設定した。このことを受けて各教科ごとに教科における仮説を設定し,実践研究を通して主題を追究することにした。
【全体仮説】 学習指導において,児童生徒一人一人の 持
っている「よさ」を把握し,その「よさ」を 生かす
視点から,達成度の個人差と興味・関 心,適性
に応じる指導の在り方を工夫すれば 基礎的・
基本的な内容を身につけさせるとと もに,一人
一人の個性を生かし,伸ばすこと ができるであ
ろう。
≪仮説の説明≫
「よさ」を生かす
一連の授業に,どのように児童生徒一人一人の「よさ」を取り入れて指導していくかということ
指導の在り方を工夫
指導過程において認知,情意,適性に対する指 導の在り方をどのように考え,学習形態や指導形 態などをいかに工夫するかということ
身につけさせる
共通に身につけさせるべきものを,主体的に生 涯学び続ける力となるように定着させること
とともに
基礎的・基本的な内容を身につけさせる「過程を通して」,更にそれを「基盤としながら」の意味
生かし
教材とのかかわりで自分の「よさ」を意識し,そのことによって学習への意欲がかきたてられ,自分自身がかけがえのない存在であることを自覚できること
伸ばす
「生かす」状態が繰り返し積み重ねられることによって,発達段階に応じて,知識や情報などを適切に使いこなし,自分で考え,創造し,表現する能力などが培われるようにすること