研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -046/137page
(4)実践研究の方向と内容
本研究の目指す最終的なところは「基礎・基本の定着と個性の伸長」にある。この研究の学校教育の場におけるねらいは,児童生徒が社会の変化に対処し局面を打開していく能力を身につけること,すなわち,児童生徒一人一人が自分自身の生き方と社会における自分の果たす役割を客観的に把握できる人間として成長することにある。そのためには,児童生徒がかけがえのない存在としての自分に気づき,そこに価値を見いだし,自分に自信を持ち,学習に新たな目標と意欲を持てるような学習場面を豊かに折り込んでやることが重要である。そこに,児童生徒一人一人の「よさ」を把握し,生かし,伸ばす学習指導の在り方を追究することの意義が生じてくる。
このように,児童生徒自身が自分の内面を見つめると同時に他人の考え方や感じ方を知って刺激を受けたり,教師の適切な助言により自分の「よさ」に気づき,フィードバックを繰り返す中で自分を内省する過程があれば,主体的で個性的な人間が形成されるうえで有効であると思われる。
集団の中で個性を把握しそれを伸長させ,基礎的・基本的な内容を定着させることは,方法的に困難な点が少なくない。しかしながら,児童生徒一人一人の能力,興味・関心を的確にとらえた学習指導の工夫,教材の持つ価値を吟味し明確な学習目標を設定し構造化する工夫,学習過程の中で児童生徒一人一人の「よさ」が生かされる学習場面の工夫,児童生徒の内面的世界(情意的側面)を把握する方法の工夫などにより対応できるものと考える。
児童生徒の「よさ」を発見し把握することは,基礎的・基本的な内容を定着させ個性の伸長を目指す学習指導では欠かせないことである。そしてそのことは児童生徒を理解し認識するうえでは目的ではなくむしろプロセスであり,しかもこのプロセスの中での児童生徒の「よさ」は,固定的なものではなく流動的なものとしてとらえられなければならない。同様に,ジェクタビリティは基礎的・基本的な内容と個性に深くかかわり浸透し次第に高められていくものである。したがって,中・長期的な展望にたった授業の展開が必要になってくる。
以上のような考えにより単元展開の基本型を図 1ー2のように考えた。そして,この流れに沿っ て教科ごとにその教科の特性を考慮した指導計画 を組み立て実践することにした。