研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -056/137page

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4.分析と考察

(1)第一次実践における「よさ」の把握の仕方

 「よさ」の把握については,「研究の構想」に示したように,第一段階の調査と第二段階の調査に分けて行った。まず,児童一人一人について個としての全体像をとらえるために「性格・行動」,「学習全般」,「読書傾向」の三つを観点として調査し,第一段階とした。更に,国語料学習についての興味・関心や学習活動,学習形態等の調査を行い,第二段階とした。

 児童一人一人の「よさ」を把握すると同時に, 取り扱う教材について基礎的・基本的な内容の分 析を行った。教材の価値を明確化するために,第 五学年の理解の指導目標と指導事項を精選した。 そして,児童一人一人の「よさ」の把握により, 明確な児童観をもって単元展開の指導の観点を確 立していったのである。把握した「よさ」は,個 人カルテに記録した。      (P54参照)

(2)「よさ」を生かし.意識化させる学習指導

 《1》 「よさ」を生かす学習指導

 基礎的・基本的な内容の定着を図りながら,児童一人一人の持つ「よさ」を生かしていくためにどのような学習活動を組織していくかについて,次のような手だてを考えた。

ア.教材に対する見方や考え方の把握

 児童は,教材に対してどのような見方や考え方 をしているのか,「楽しく読もう学習プリント」 で調査した。教材分析の中で持った指導の観点を 基に,把握した児童一人一人の「よさ」をどこで どのように生かしていくかを構想していく材料を 得るためである。(P54カルテ「教材に対する見 方や考え方」欄参照)

イ.座席表を活用した意図的指名

 児童の教材に対する見方や考え方を生かすため に,座席表を活用した。一単位時間どとに「学習 プリント」の視点を学習の課題として設定し,そ の視点に対する児童一人一人の見方や考え方を座 席表に記入し,指名構想を持って授業に臨んだ。 児童の見方や考え方を,意図的な指名により引き 出して交流させ,より多面的で深い思考を促そう とする意図を持ったものである。 (P50参照)

ウ.自分の考えをチェックできるノートの活用

 児童の多様な見方や考え方を引き出し,より多 面的で深い思考を促すために,個人ノートの活用 を図った。友達の発言に対して,また,全体での 話し合いの中で自分の考えと比較しながら,同意 の場合は○,疑問の場合は△,反対の場合は×を 短時間の中でノートに書き込ませた。

 これは,常に自分の見方や考え方を大切にさせ, 友達との比較の中で自分なりの見方や考え方を深 めさせるという意図があり,同時に発言できない でいる児童への配慮でもある。 (P50参照)

エ.発展教材の提示と選択

 教科書教材での読み取りの内容を基に,発展教 材を提示し選択させた。教科書教材の価値の理解 をさらに深い認識にまで高める意図がある。発展 教材としては,教科書教材の出典の中から教科書 教材の持つ価値と同様の作品五点を選んだ。その 中から児童の興味・関心,教科書教材での読み取 りとのかかわりで作品一点を選択させた。(P50参照)

オ.グループ学習と主題に関するまとめ

 発展教材の選択,教科書教材の読み取りでのまとめ,個人カルテの累積記録から,児童一人一人の「よさ」が生かされるグループ編成をした。その中で,それぞれが読み取った内容を交流させながら主題に対してのまとめをさせた。

 同一の作品に対してもいろいろな見方や考え方があり,その認識の中で再度,自分なりの見方や考え方を深めさせるというねらいがある。

《2》 「よさ」の意識化を図る場の設定

 グループどとに主題についての話し合いをさせた後で,まとまったこと,考えの食い違いのあるところを明らかにしながら全体での話し合いをさせた。グループでの考えと個人の考えを相互に発表させ,またグループにもどして話し合わせた。

 そこで,グループの中でお互いの「よさ」を発見させるような活動を設定した。「主題に対する見方や考え方のよかったところ」,「グループ内


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