研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -057/137page
での学習の様子でよかったところ」という観点で カードに記述させた。児童の自己評価,児童どう しの相互評価では,友達の「よさ」を発見させる 中で主題認識に至るまでの学習内容と学習の仕方 を振り返らせる意図があり,更に学習に対する意 欲や態度,方法についての「よさ」を発見し合わ せるというねらいを持ったものである。
「主題に対する見方や考え方」については,主題に関わる認識力,思考力,判断力,創造力,表現力等,ジェクタビリティの要素を重視した評価であり,「学習の様子」については,学習形態の好み,学習方法の違い等,学習適性の面を重視する評価とした。
自己評価と相互評価,教師の評価で記述された ものを,自分なりに「『よさ』発見カード」にま とめさせた。事前に把握した「よさ」が,基礎的・ 基本的な内容の定着を図る学習の中で生かされた ことを,児童一人一人が意識化できるような活動 を取り入れたものである。 (P51「相互交流の中での『よさ』の発見」参照)
《3》 結果と考察
ア.「よさ」を生かす学習指導について
○ 基礎的・基本的な内容の定着の面から
「よさ」の把握の段階で,教材の基礎的・基本的な内容の分析を行い,明確な指導観を持って学習指導の展開にあたったことは前に述べた。
「学習プリント」による視点は,そのまま一時間ごとの学習課題となった。その課題を基にして教材をどう読むのか,なぜそう読むのか,どうすればそう読めるのか,という点での話し合いが活発に行われた。その中で,意図的指名やノートの活用が生かされ,児童一人一人の見方や考え方が集団思考の中で十分に練り上げられたと考える。
「学習プリント」による視点は,基礎的・基本 的な内容の分析がそのまま反映され,学習課題と して焦点化されていたと考える。視点を切り口と しての読み取りは,教材の持つ価値の認識にまで 到達するに十分であった。そして,そこに到達す るまで国語科として必要な学習技能の育成も図ら れていった。更に,発展教材を選択させ,読み深 めさせる学習を設定したことで,教科書教材の読 み取りで培われた能力がそのまま転移し基礎的・ 基本的な内容の定着がいっそう深められた。有効 な手だての一つであったと考える。単元終了後の 標準テストの結果 図2−1から,知識・理解 の定着が図られたことが実証されている。
○ 「よさ」を生かす面から
教科書教材の内容の理解,価値の認識の面における授業展開の段階では,教材に対する児童一人一人の見方や考え方を一つの「よさ」ととらえた。座席表を活用しての指導の展開,ノートチェックから見た児童の見方や考え方のゆれと深まりなどから,児童の「よさ」を生かす場面が多くあったと考える。
また,事前に把握した「よさ」は,グループ学習時のグループ編成,発展教材の選択などの学習活動場面設定に格好の資料となり大変役立った。
このように考えると,基礎的・基本的な内容の定着を図ることと「よさ」を生かすことは,深く関連し合っていることがより明確になってくる。
イ.「よさ」の意識化の面から
「よさ」の意識化を図る学習指導の展開から考察する。「主題に対する見方や考え方のよかったところ」と「学習の様子でよかったところ」の二つの観点で「よさ」をとらえさせた。前者は,教材内容にかかわることであり,後者は学習活動にかかわることである。児童に「よさ」を意識化させる場合の手だてとして,具体的な内容を通して活動させることが大切であると考える。その点,二つの観点の提示は異体的な活動をさせるために有効であった。ただ,方法的に慣れていない活動で