研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -059/137page

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ア.「よさ」の意識化の場の設定

 第一次実践での「よさ」の意識化の場と同様,グループの中で三つの観点からお互いの作品の読み合いをさせた。「作品に対する感想」,「構想表の観点が作品によく生かされているか」,「あなたの見方や考え方,書き方が作品によく生かされていたか」について,自己評価,相互評価,教師の評価をした。

 評価の観点は,「基礎的・基本的な内容の定着 が図られたか」,「『よさ』が生かされ意識が 深まったか」を見るものである。(P52,53参照)

イ.「よさ」を育てる場の設定

 グループごとに作成した作品をグループ文集と してまとめさせた。他のグループの文集と交換さ せ,「よさ」の意識化のところで使った評価カー ドによいところを記入して読み合うという活動を させた。          (P53写真参照)

《3》 結果と考察

ア.意識した「よさ」を生かし,育てる指導

○ 基礎的・基本的な内容の定着の面から

 第一次実践で意識された「よさ」を生かすために,表現領域の教材を設定した。前単元では,理解領域での主題の読み取りが主な内容であった。

 教材の設定にあたっては理解から表現へ,表現から理解への関連を図る上で意義があったと考える。また,教科書教材での構想の観点を,実際に別の教材を用いて分析させ納得させた上で表現活動へ移行していったため,学習の観点を明確に持たせることができた。構想表の観点は,実際の表現活動の中で必要感のあるものとしてとらえられていった。

 作文学習の中で,どのようにして題材を設定するか,どのようにして構想していくか,それはどのような観点から考えるか,どのような書き方がよいか等作文学習の技能の定着も図られた。

○ 「よさ」を生かし,育てる面から

 意識した「よさ」を児童が納得いくまで,文章として表現することをねらって表現の題材を設定した。その結果,第一次実践では見られなかった児童の動きがあった。題材の設定については,児童自身に選択の基準があり,児童自身の価値判断に基づく設定であった。その結果,児童自身の思い入れや見方や考え方にそれぞれの「よさ」が表れ生かされていったと考える。

 意識化の場面では,第一次実践での反省を基にして,自ら作り上げた構想表により作品を完成させるという具体的な活動を通して,「よさ」の意識化を図った。その結果,方法的にも慣れ,具体的な構想表と作品を通した「よさ」の意識化であったため,いっそうの深まりが得られた。

 F.Sのその後の変容をみると,第一次実践で書 くことに自信を持ったことがよく意識され,表現 活動に意欲的に取り組んだことがわかる。また, 相互交流の中での認め合いの活動についても,具 体的に記述され,内容的に確かな変容を認めるこ とができる。

○ 作文学習の調査結果から

 作文学習の調査結果の事前と事後を比較してみ る。作文学習はあまり好まれるものではないが, この調査結果の変容は期待以上のものがあった。

<図2-2>作文学習に対する興味・関心
<図2-2>作文学習に対する興味・関心

○ ジェクタビリティについて

 基礎的・基本的な内容を定着させ,「よさ」を生かし,意識化させることによって両者が互いに作用し合い刺激し合う。その相互作用の中でジェクタビリティも作用し,刺激され伸ばされていくのであろう。それは,具体的な学習活動によって可能であると考える。ジェクタビリティに対する意識の変容をレーダーチャートとして個人カルテに載せた。           (P55参照)

○ 社会的距離指数について

クラス全体の変容度をみると次ページの表2−1にまとめることができる。学級内で個の「よさ」を認め合い「よさ」を意識し合うようになった結果であろう。


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