研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -061/137page

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III 小学校社会科における実践研究

1.社会科における研究の仮説

(1)「基礎・基本」と「個性」のかかわり

 小学校社会科における実践研究を進めるにあたって,研究のための理論を受けて,小学校社会科における「基礎・基本」,「個性」,それらのかかわりについて次のように考えた。

 本研究においては,基礎・基本を基礎的・基本的な内容ととらえる。この内容は,具体的には学習指導要領に示されている各学年の目標及び内容であり,児童が教材を媒介にして社会的事象のもつ意味を追究していくことによって得ることができる知識・能力・態度であると考えた。

 個性については,児童一人一人の持つ「よさ」ととらえる。児童個々の持つ「よさ」は,社会的事象に対しての見方・考え方の違いとして表れるものであり,追究過程での思考の仕方,表現の仕方,行動の仕方の違いとして表れるものであると考えた。

 基礎的・基本的な内容が定着し,児童一人一人の「よさ」の伸長が図られる過程において,ジェクタビリティ〔判断力,表現力,創造力,思考力等の能力〕が深くかかわりを持つと考える。

 つまり,基礎的・基本的な内容の定着を図る過程に,児童一人一人の持つ「よさ」が生かされるような学習活動を取り入れることで,ジェクタビリティが刺激され,それぞれが相互に作用し合い,基礎的・基本的な内容が定着するとともに個性の伸長も図られるものと考えた。

(2)研究の仮説

 社会科学習指導において,児童一人一人の持っている「よさ」を把握し,学習内容とのかかわりから,児童の興味・関心,思考の型,行動特性,表現特性それぞれに応じて授業の在り方を工夫すれば,基礎的・基本的な内容を身につけさせることができるとともに,一人一人の「よさ」を生かし,伸ばすことができるであろう。

興味・関心

 児童の興味・関心を調査し,同じ興味・関心を持つ児童でグループを作り,課題作りをさせる。

思考の型

 従来の問題解決型学習は,課題設定 ⇒ 仮説設定 ⇒  検証の順序が一般的であり,どちらかというと 演繹・反省型の思考をとりやすい児童に有利な学 習のパターンである。児童の思考の流れは,一人 一人違うのだから,学習目標を達成する道筋も異 なってくるはずである。児童に最適な学習方法で 課題解決をさせるために,児童の発達段階を考慮 しながら,思考の型を演繹型と帰納型,直観型と 反省型に分け,それぞれに応じた学習方法をとら せることにした。

 具体的な学習場面において,児童の思考の型を様々な角度から調査し,演繹型の児童には,すでによく知られている原理をそれぞれの場面で活用する学習方法を,帰納型の児童には,観察や調査の結果から原理や法則を導き出す学習方法をとらせる。一方,問題場面に出会ったとき,筋道を立てて理詰めに考えないで,ぱっと答えを思いついたり,判断したりする直観を重視する児童,問題場面の条件を調べ,自分の考えが良いか悪いかフィードバックを繰り返しながら考えを進めるといった反省型の児童,それぞれに対応した学習方法を用意した。

行動特性

 児童の行動を観察すると,学級やグループ等で積極的に活動する児童,消極的ではあるが,言われたことや課題に対しては精一杯取り組む児童など,その行動には様々な特性が見られる。それらの行動の特性についても,一人一人の「よさ」として認め,グループでの学習活動の際,児童の行動の特性に応じて役割を分担する。

表現特性

 多様な表現方法(絵,文章,図や表,映像,動作等)を保障し,児童の得意とする表現の仕方に応じて表現させる。


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