研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -071/137page
4.分析と考察
学習の効果を判断するために,次の3つの調査 をした。
〔調査a〕 学習の方法・形態・態度・意欲等, 学習全般についての児童の変容を見るため,児童 生徒対象調査と同じ項目(研究紀要第72号P72〜 76)について,事前と事後に実施した。
〔調査b〕 社会科学習の取り組みについて,事 前と事後に調査した。
〔調査c〕 学習後の児童の感想を自由記述で書 かせた。項目は,見学学習,まとめる学習,イイ ねカード,発表,班での役割,思考類型別に分け た学習方法の6つである。
以上の調査結果と児童の学習の様子の観察から考察を加えたい。
(1)学習全体について
調査aの主な項目について「とてもよくあては まる」「どちらかといえばあてはまる」の合計の 割合は 表3−1 の通りである。
< 表3-1 >学習全体について
項 目 事 前 事 後 1 時間を多くかければ学習内容がわかることがある 81.4% 71.6% 2 授業中自分で考えついた方法を生かして学習している 54.4 70.0 3 授業中自分の考えをいろいろな資料などで確かめている 74.6 56.7 4 自分の「考え方」でもっと取り組んでみたい 82.8 63.3 5 学級のみんなで同じことを一緒に学習したい 88.1 66.6 6 グループで学習したい 69.0 75.0 7 一人で学習課題に取り組みたい 59.6 23.3 1〜4 の 項目 は,学習方法に関するものである。 今回の学習は,児童の学習適性に応じる学習方法 をとったことで, 項目2 が増加し, 項目4 が減少 していることから,自分の考え方が生かされ,児 童はある程度学習方法に満足感を抱いているよう に見うけられる。
5〜7 の 項目 は,学習形態に関するものである。 一斉学習,一人学習の項目が減少し,グループ学 習が増加しており,グループ学習中心に行った今 回の授業が好感を持って児童に受け入れられたと 考えられる。
1〜7 の 項目 以外の調査結果を見てみると,学 習意欲についての項目に,今回の研究の効果が表 れている。これは「やる気がおきるのはどんなと きですか」との質問について,13項目から4つ選 択させたものであるが,事前と事後を比較してプ ラスに変化した項目の中に,「友達がいっしょう けんめいがんばっているのを知ったとき」「自分 の考えや意見が役に立ったりたいせつにされたと き」「努力したことが友達や先生などからみとめ られたとき」などが含まれている。この3項目が プラスに変化したことは,今回の研究のねらいで ある「よさ」に着目し,「よさ」を生かし,「よ さ」を認めることが,児童のやる気につながった 結果であり,いくつかの手だてが有効に働いたこ との一つの表れであると考えている。
調査bの項目それぞれについての「すき」と 「少しすき」の合計の割合は 表3−2 の通りである。
< 表3-2 >社会科学習の取り組みについて
項 目 事 前 事 後 1 見学学習について 86.8% 91.7% 2 資料集や本を使って調べることについて 59.0 70.0 3 課題が決まったらすぐに自分の考えを書くことについて 55.7 68.3 4 課題が決まったらすぐに調べることについて 81.7 67.8 1 の 項目 については,9割以上の児童が見学学 習を「すき」「少しすき」と考えており,一応の 成果があがったと考える。しかし,「すき」「少 しすき」から「きらい」「少しきらい」に変化 した児童が5名いる。その理由としては「むずか しい」「おもしろくない」「班によって早く見学 に出かけるので不公平だ」等があげられている。 ことについては,今回は児童の特性に応じた学習 コースを途中で変更しなかったことや,班によっ て学習の仕方が異なっていることなどについて, 児童にきちんと理解させていなかったことが原因 として考えられる。したがって,児童の学習状況 に応じた柔軟な配慮や学習の仕方の違いについて の説明がもっと必要であったと感じている。
3 の 項目 については,多くの児童がプラスの評 価をしている。「すぐに自分の考えを書くこと」 は,演繹型の児童に対する処遇であったので,こ の型の児童22名についてみると,事後に「すき」 「少しすき」の割合が90.9%であった。このこ とは児童の「よさ」に働きかけ,その「よさ」を 伸ばそうとする今回の処遇が,十分に良い結果で