研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -072/137page

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児童に受け入れられたと考えられる。

  4の項目 については,帰納型の児童に対する処遇であったが,この型の児童38名についてみると, 事後に「すき」「少しすき」の割合が72.9%で あり,特に効果が上がったとは認められなかった。 このことは,児童は日頃より,演繹型の問題解決 の仕方に慣れているためか,今回の帰納型に対し ての処遇が十分に機能していなかったのではない かと考えられる。

 次に,「社会の学習について自分の思っている こと」を自由に記述させた結果についてであるが, 特徴的なこととして,見学学習の楽しさについて 記している児童が増加(事前11名,事後32名)し ていることが言える。

(2)知識・理解の内容の定着について

 調査bで,「あなたが考えるよいお店やさんは どんなお店やさんですか」について自由に記述さ せた。これは,商店街の販売の工夫や協力につい ての理解の深まりを,よいお店やさんの理由とし て記述した項目数で量的に把握することにしたた めである。その結果は 表3−3 の通りである。

表3-3 >知識・理解の内容の定着について
項目 全体 演繹型 帰納型
事後に項目数が減少 8.3% 14.8% 3.0% 4.5% 10.5%
事前・事後の項目数変化なし 38.3 44.4 33.3 22.7 47.4
事後に項目数が 1つ増加 11.7 11.1 12.1 9.1 13.2
2つ増加 16.7 7.4 24.2 31.8 7.9
3つ以上増加 25.0 22.2 27.3 31.8 21.1
一人あたりの項目数 事前の平均値 2.0 1.9 2.1 2.2 1.9
事後の平均値 3.3 2.8 3.7 4.0 2.9

 全体では,半数以上の児童が項目数が増加して いる。

 また,思考類型別では,演繹型が帰納型を上まわっている。処遇としては,帰納型の児童には,見学の視点を指示した発見カードを持たせ,より多くの時間をかけて見学させた。したがって,発見できる項目も多いと予想していたが,実際の授業において,見学後のまとめの時間が不足したため処遇の効果が表れなかったものと考えることができる。

 項目数に変化のない児童についても,実際に書かれた内容を見ると,理解が深まった記述が多い。

(3)「よさ」を生かす指導について

 調査cで,自由記述の内容を「よかった」「ど ちらでもない」「悪かった」の3段階に区分して 集計した結果が, 表3−4〜表3−8 の通りであ る。

《1》 見学学習について

表3-4 >見学学習について
項目 全体 班長 副班長 記録係 発見係
よかった 86.7% 76.4% 87.4% 88.2% 100.0%
どちらでもない 5.0 11.8 6.3 0 0
悪かった 8.3 11.8 6.3 11.8 0

 見学学習については,8割を越える児童がよか ったとしている。このことは, 表3−2 の結果と も対応している。この中で班長の評価が他より低 い理由としては,見学学習における班長の責任が たいへんだったためと考えられる。

 B班の班長であったA子の見学学習(第6〜7 時間目)での様子を,観察者は次のように記して いる。

課   題
  • なぜ店によって,物の値段が違うのだろう。 
  • 売るために店では,どんな工夫をしているのか。

A子の活動の様子

  • 昇降口で,整列の指示をする,先頭に立って  歩き出す。 
  • 横断歩道で横断の指示,安全の確認をする。 
  • 商店1に入り,代表して大声であいさつする。 
  • 課題を調べる。カレーの値段の違いに注目。 
  • お礼を言って,次の店へ急ぐ。 
  • 商店2に入る。あいさつ,値段の調査。 
  • カレーの値段の違いを自分で記録する。 
  • 商店3に向かう。あいさつして店に入る。 
  • カレーに値段が書いてないので,困って班の仲間に相談する。 
  • カレーを手にとって,代表して値段を聞く。 
  • お礼を言って,再び商店1に戻る。 ・店員に売るための工夫を聞く。

 A子は,この授業の感想の中で「とてもおもし ろかったけど,むずかしい」と述べており,班の 中心として班長に課せられた役割が多く,児童に よっては,過重負担になったことが考えられる。


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