研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -073/137page
《2》 まとめる学習
< 表3-5 >まとめる学習について
項目 全体 文 絵 図・表 その他 よかった 61.6% 53.3% 64.3% 85.7% 50.0% どちらでもない 1.7 0 0 14.3 0 悪かった 36.7 46.7 35.7 0 50.0 全体としては多くの児童が,この学習をよかっ たとしているが,悪かったと答えている児童もか なりいる。その理由としては,まとめのたいへん さをあげている。「その他」の項目は,動作,写 真,VTR等の表現を選んだ児童であるが,これ らは今回は用いられなかったので,この表現を選 んだ児童に,多少不満が残ったようである。
B班のC男のまとめの学習(第13時間目)での 様子を,観察者は次のように記している。
C男の活動の様子 (表現特性=絵)
- 紙を半分に折り,切る。
- 隣りの児童が「何すんの」と聞く。「扉を作るの」「失敗すんなよ」「だいじょうぶだ」
- 自分で「よし」「だめか」と言いながら紙切り細工を始める。
- 「シルクスタンプ探険隊」と書いて,青,茶,黒,緑色のマジックでカラフルにジャングルの絵を描く。「探検隊だから,ジャングルだ」
- 「ぼくは,門を作ろう」と言って,一心にはさ みを使って門を完成させようとしている。
C男の活動の様子から,自分の表現特性を生か して,生き生きと活動する姿がうかがえる。
実際に出来上がった児童の作品をみるとどれもが素晴らしく,自分の表現特性を十分に発揮したものであった。学習したことを定着させる上で,まとめの段階を大切にすることは重要なことである。その意味においても,児童の持つ「よさ」をさらに意識化させるとともに,その「よさ」を生かすことが望まれる。
《3》 「イイねカード」について
< 表3-6 >イイねカードについて
項目 全体 男 女 演繹型 帰納型 よかった 81.7% 77.8% 84.8% 90.9% 76.3% どちらでもない 8.3 11.1 9.1 0 13.2 悪かった 10.0 11.1 6.1 9.1 10.5 「イイねカード」をよかったとする児童がたいへん多かった。
ある児童が「イイねカード」に対しての感想の中で「もらったときうれしくてなきたくなってしまった・・・」と述べている。またある児童は,「もらったとき自分のいいところがわかり,やる気がでた」と。自分のもつ「よさ」を他から認められることは,このうえない喜びであり,それ以後の学習への意欲としてはねかえるものである。また,それは単なる喜びとして留まるものではなく,「よさ」を意識した学習を繰り返すことで,児童が自らの個性にあった学習ができるようになる可能性を示すものと思われる。
《4》 役割について
< 表3-7 >役割について
項目 全体 班長 副班長 記録係 発見係 よかった 60.0% 47.1% 75.0% 70.6% 40.0% どちらでもない 6.7 0 0 17.6 10.0 悪かった 33.3 52.9 25.0 11.8 50.0 この項目については,班長と発見係の評価が低い。理由としては,班長の役割が重かったこと,発見係の役割が明確でなかったことがあげられている。したがって,学習活動の内容に応じてやるべきことを明確に示してやることや,役割の内容の軽重を個に応じてつけてやることの大切さを感じている。
《5》 学習の仕方について
< 表3-8 >学習の仕方について
項目 全体 演繹型 帰納型 直観型 反省型 よかった 60.0% 59.1% 60.5% 55.6% 61.9% どちらでもない 25.9 27.3 15.8 22.2 19.1 悪かった 11.1 13.6 23.7 22.2 19.1 学習の仕方についての評価は,思考型別に大きな違いは認められなかった。「悪かった」と評価をした多くの児童が同じ班に所属しており,班内の友達関係が,評価に影響を与えたことも一因であろう。
今回の研究では,事前に把握した児童個々の思考の型をもとに処遇を行い,単元を通してはじめのコースのまま学習を行った。大部分の児童は,研究の意図通り,自らの「よさ」に気づき,その「よさ」を発揮した学習を行った。しかし,少数の児童ではあるが自分の学習コースに不適応をおこ