研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -075/137page

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IV 中学校数学科における実践研究

1.数学科における研究の仮説

(1)「基礎・基本」と「個性」のかかわり

 数学科における実践研究にあたって,基礎・基本と個性のかかわりについて次のように考えた。

 基礎・基本は,基礎的・基本的な内容であるとし,学習指導要領の目標・内容及び教材のもつ価値とした。それは,課題解決の過程を通して養われていく知識や技能,数学的な考え方及び態度であり,また,自分で考え,発見し,創造することを通して感得する数学の美しさ,有用性などを含むものと解釈した。

 個性すなわち「よさ」は,課題解決において具体物を使って考える,図をかいて考える,数値を小さくして考えるなど,さまざまな考え方の中に表れるものである。したがって,数学の学習においては,課題解決にみられる生徒一人一人の見方,考え方,追究の仕方などに表れる「よさ」を認め,これを生かすことが大切であると考えた。

 以上のように基礎・基本と個性をとらえ,これらとジェクタビリティ(判断力,表現力,創造力,思考力等の能力)とのかかわりを深めながら学習を展開することによって,基礎的・基本的な内容が定着し,「よさ」が生かされるものと考えた。

(2)研究の仮説

 基礎的・基本的な内容と「よさ」について以上のようにとらえ,中学校数学科における研究の仮説を次のように設定した。

 課題解決の過程で,小集団学習を取り入れ,単元全体を通して自己評価・相互評価を行えば基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに,一人一人の「よさ」を生かし伸ばすことができるであろう。

≪仮説の説明≫

 数学の授業で個の「よさ」を生かすためには,課題を解決する過程で一人一人が十分に考えを出し,お互いにそれぞれの考えの「よさ」を認め,生かすことができるような授業を創造することが大切であると考える。

 そのためには,一人一人の考えを「どの場面で」「どのように生かすか」を教材とのかかわりからおさえておく必要がある。

 そのためには,一人一人の考えを「どの場面で」「どのように生かすか」を教材とのかかわりからおさえておく必要がある。

○課題に対して自分なりに解決の糸口をつかめ,見通しを持つことができること。

○級友や教師の援助を受けながらも自分なりに課題を解決できること。

○一人一人の考えの「よさ」を認め,「より簡単なもの」「より明確なもの」「より広く使えるもの」の視点から解決の方法を比較検討し,追究できること。

 そこで,課題解決の中心となる解決の見通し及び課題解決の段階に小集団(班)学習を取り入れることにより,一人一人が考えを十分に出し,それぞれの考えの「よさ」を認め合い,見通しを持って課題解決ができるのではないかと考えた。

 また,自分の「よさ」を生かすためには,「よさ」について認識することが大切であると考える。単位時間の終りに,「自分はなにが分かったのか」「みんなで話し合い学習ができたか」などを自己評価並びに相互評価することにより,なおいっそう「よさ」の意識化が図られる。そして,それらを単元全体を通して継続したときに,自己認識がさらに深まり自分の「よさ」を多面的にとらえることができるものと考える。

2.数学科実践研究の構想

(1)研究の視点

 研究の仮説から研究を進めるにあたって,次の2つのことを視点としておさえた。

@ 一人一人の「よさ」は,集団とのかかわりの


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