研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -082/137page
(4)検証授業を通しての実践(検証授業II)
小集団学習を取り入れた実際の授業について, 抽出生徒M男を中心とした班活動及び授業全体の 観察記録を基に述べる。
《1》抽出生徒M男を中心とした班活動
教 師 ・ 班 の 生 徒 抽 出 生 徒 (M 男)
観 察 者 の 考 察
P4 (授業開始前)また,班ごとにやんの? 班ごとの方が楽しいな。 1.本時の課題をつかむ。
(1)問題を解く。
《1》 自分で考える。T(学習プリントの図を板書)この図で予想できることを各自で考えなさい。
◎前回(検証授業 I)は班での話し合いが1対1のものから,今回は全員での話し合いに変わってきている。
◎一人一人の発言も多く,しかもその意見 を大切にしている姿が見られた。
◎カード記入については前回のようにM男 にだけ頼ることなく,P1,P4(女子)がさっと書きだしている。班学習での役割分担がうまくいっているように思える。
○ Tが「∠Dは共通」 「AD⊥BC」 「∠ADB=∠ADC」と,確かめながら書き換えていく思考の流れを見ても,班での話し合いがあってはじめて気づき理解され「あのように書けばいいんだな」 のような言葉として出てきていると考えられる。班学習が生きている。
○考えが出てこなくなると,自信がないせ いもあって,どうしても班での話し合いがそれぞれ1対1になってしまっている。しかし,わからない者どうしの集りであるせいか,それほど不安や消極的な態度が見られず,単発的ではあるがそれなりに考えて発言している。
【学習のプリント】 右の図は,二等辺三角形の頂角の二等分線をひいたものです。この図を見て予想できることがらをできるだけ多くあげなさい。 《2》 小集団で考える。 T 自分の考えを持ち寄って,班でまとめてください。(カード配布)
P1 ADは共通でいいでしょう?
P2 ∠Dが共通。
P4がカードに∠Dは共通と記入。
T ∠Dは共通とはどこの角の意味だ? 別の言葉で書き直してもらいます。
(2)予測したことがらを整理する。
T 同じものを整理してはずしていきます。「ADは共通」は今日は,はずしていきます。
- 「BD=CD」
- 「∠B=∠C」
- 「∠ADB=∠ADC」
(3)本時の課題をつかむ。
2.証明の方法を考える。
(1)仮定と結論に分ける。
仮定 AB=AC
∠BAD=∠CAD
結論 BD=CD・・・・・・・《1》 ∠ADB=∠ADC=∠R・・・・・・《2》(2)結論《1》を証明する。(口頭論証)
(3)結論《2》について証明の方針を立てる。
《1》各自で考える。
《2》小集団で考える。
○問題文を読み直し,解決しようとする意欲を示す。 ○無視
M男 ナイス!,ナイス!
○みんなに∠Dは共通と小声で話す。
M男 辺ADは共通。
M男 早く書け。
○P4の記入したカードを先生に持って行く。
M男 AD⊥BCって書けばいいの?
M男 おれらの考えと同じだ。
M男 あのように書けはいいんだな。
○ P2と相談するが,なかなか出てこない。 次に,わきのP4に相談する。
◎自分の考えを全員に言えるところまでは いっていないが,何とか解決しようとする意欲が感じられる。集中力も十分観察 できた。
観察者の考察からもうかがえるように,班活動 の中でM男は,自分の考えの筋道を再確認し,自 信を持つことができたようである。「おれらの考 えと同じだ」の発言からも自己認識の高まりと班へ の所属感がうかがえる。