研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -083/137page

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《2》 授業全体の観察記録

 授業の中に小集団学習を取り入れ,生徒の「よ さ」が生かされた活動場面の中心となる解決の見 通し及び課題解決の段階の観察記録を次に示す。

段階

全    体    の    観    察

観 察 者 の 考 察











○課題について,生徒一人一人が考えられることをカードに次々と書いた。

   辺について
   ・BD=CD  ・ADは共通

   角について
   ・∠B=∠C ・∠ADB=∠ADC ・AD⊥BC

   その他   ・△ABD≡△ACD

○証明されていることと,されていないことに分けることにより課題を決めた。

○結論について
 ・既習した合同についての証明なので,ほとんどの生徒が理解していたようだ。
 ・2名の生徒を指名して説明。

○課題が一人一人のものになっていたためか,結論《2》の証明の方針についても他の人にまかせようとすることなく,真剣に取り組む姿が見られた。

○課題がオープンであったため,一人一人の発想が生かされた。

 

○無理なく生徒サイドに合った課題の設定であり,その後の学習意欲につながった。
○《1》については,見通しの段階で口頭証明した  ことにより,《2》についてだけ解決の段階で証明するようにしたことは, 生徒にとって考え方の整理がつき,ゆとりができたといえる。







○結論について
 ・BD=CDについては,結論《1》より明らかであることは理解できた。
 ・∠ADB=∠ADC=∠Rが念頭で分かっていても,説明となる  と抵抗があったようだ。

○指導上の留意点にあげておいた下の証明がK夫から出され,本人も喜んでいた。
 また,他の生徒も驚きを示し,考えのすばらしさを賞賛した。

証明

(これと同じような考え方をした班が2班あった。)

○班から出された証明を全員で考え,比較検討させたことは, いろいろな方法によって結論が導かれることを生徒に体得させる意図であろう。生徒の説明する時間が多かった。

 ○自分と班の考えを区別してカードに書かせたり,班から「○○さんの考え,ちょっと違うな」と出し合える雰囲気が, 生徒一人一人の「よさ」を生かしたものになると考えた。
○《2》の証明に時間のゆとりがあったことは生徒の発想が十分生かされることになったと考える。 ジェクタビリティを育成するためには,ゆとりある授業を創造することが大切であると痛感した。

《3》 授業の考察

ア 自分一人で考えるよりも,班で考えたほうが証明の糸口をつかむのにも効果的な活動であった。班活動のなかで,発表,記録,カード配布など,役割分担によってそれぞれの持ち味が生かされていた。課題解決という一つの目的に向かって全員が持ち味を生かし協力する場を設定することは,生徒一人一人が自己存在感を体得できる場にもなり,「よさ」を生かすためにも大切であると考える。

イ オープン的な課題を提示することにより,生 徒一人一人が課題意識を持ち続け,意欲的に課 題解決にあたり,「頂角の2等分線が底辺を垂 直に2等分する」ことの証明の仕方について比 較検討できた。このことは,教材の価値を追究 する面から考えて効果的であった。


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