研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -084/137page
4.分析と考察
生徒一人一人の「よさ」を生かすために,小集団学習,自己評価・相互評価を取り入れた授業を実践してきた。これらの手だてを中心に,学習状況カード,個人カルテ,事前・事後テスト,日常の観察記録のデータなどを基に分析と考察を加えたい。
(1)一人一人の「よさ」を生かす
「よさ」の発見カードを用いて,事前と事後に 自己評価をさせた。その結果が 図4−2 である。
班学習については, 項目6 に示すようにあまり 変化はない。しかし,事前・事後とも級友と話し 合って学習を進めることが好きなようである。証 明などの学習では,ちょっとした解決の糸口をつ かめることが課題解決につながる。その意味でも, 班学習についての実態を示す 項目6 から,特に今 回は自力解決を試みた後に班で話し合うことに重 点をおいた。班学習は自他の考えを確かめ,その 相違に気づくなど思考を深める場ともなる。班学 習が好きなことの理由は,課題をなんとか解決で きること,みんなで協力しながら課題を解決する ことのようである。 項目7 からも,級友が困って いるときに,お互いに助け合っていくことの大切 さを感じている生徒の数が多くなってきている。 授業の考察にも述べたが,班活動の中で役割分担 によってそれぞれの持ち味が生かされていたこと からも,班への所属感と存在感が感じられる。
項目2 から,自分の考えた方法を生かして学習 している生徒の数の増えていることが明確にとら えられる。日常の観察から見ても,自分の考えを 班員にはたらきかける場面が多くなってきた。こ のことからもうかがえるように,日常の学習にお ける学習プリントやノート等の使用において,自 他の考えが分かるようにしておくことは,自分の 考えを大切にするとともに生かすことにもなるの で,班学習をする場合には特に大切にしたい。
自分の考えを生かして学習できることが学習意 欲を喚起させる要因になっているのか, 項目4 で は,いろいろなやり方を考えて頑張る生徒が増え てきている。一人一人の「よさ」が生かされ,学 習意欲が喚起されたのであろう。
「よさ」の認識の面から全体的に考えてみると,それぞれの項目について,少しずつではあるが変容してきていることがうかがわれる。また,班の学習について,学習状況カードによる相互評価からも,みんなが頑張って学習していたとの高い評価がみられた。
< 図4−2 > 「よさ」の発見カード
評定尺度
1 とてもよく当てはまる。
2 どちらかといえは当てはまる。
3 どちらかといえは当てはまらない。
4 まったく当てはまらない。 (39名)