研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -087/137page
(3)学習内容の定着
基礎的・基本的な内容を身につけさせる観点か ら,検証授業 I で学習した内容の定着の実態を例 として 図4−7 を基に述べる。
< 図4−7 > 「二等辺三角形の底角は等しい」 ことを証明するための補助線の ひき方の正答率
《1》の考え方について
事前に頂角Aの2等分線のひき方をした生徒は 少ない。角を2等分することに抵抗があるようだ。 しかし,班学習によって自分のひき方と級友のひ き方の違いに気づき,自分でも実際に線をひき, このひき方でも合同な2つの三角形に分けられる ことを理解した。そして,3時間目に「頂角の2 等分線は底辺を垂直に2等分する」ことを学習し, 既習事項との関連が図られ,なおいっそう理解が 深められた。期末テストの正答率が上がったのも その成果とも考えられる。
《2》の考え方について
生徒は合同条件として「3辺がそれぞれ等しい」 ことを想起する。期末テストにおいてもこの考え を基に,補助線をひいて考える生徒が多かった。
《3》の考え方について
検証授業Tでは,この線のひき方をして証明で きると考えた生徒と,できないと考える生徒が意 見をたたかわせた。それだけに,その後,直角三 角形の合同を学習し,頂点から底辺に垂線をひく 方法でも証明できることを知った生徒は,驚きを 示し数学の妙味を味わえたようである。そして, Bの方法による証明の正答率も41%から92%へと 高くなった。
《1》〜《3》についての定着率はいずれも高くなって いる。このことは,次の学習の成果と考えられる。
○遡及効果により,既習した内容がよく理解された。
○自分の考えを生かして学習する主体的な学習方 法を身につけることによって,理解度もさらに 深まってきた。
○班学習によって,多様な考え方ができるように なってきた。
(4)全体考察
小集団学習を取り入れることにより,解決の見通しが持て,課題を自分なりに解決できる生徒が多くなってきた。その結果,班での一人一人の考えを出し合い,比較検討し,よりよい解決方法を練り上げていく話し合いも活発になってきた。また,自ら課題を把握すると,与えられた条件から提示された図形に記号を入れたり,仮定と結論を書くなど,自ら学ぶ姿が多く見られるようになってきた。これは,「個人で考える 班・全体で考える 個人で考える」という一連の学習の仕方を繰り返し積み重ねることによって「なにを」「どのように考えるか」が習得され,主体的な学習の仕方が身についてきたためと考えられる。
また,自己評価することにより自分の考えを確かめて学習することができ,自信を持って課題に取り組むことができるようになってきたと考える。
更に,班学習でみんなが協力し合っていることを相互評価することにより,班の連帯意識が深まり課題解決への意欲はさらに高まったと考える。しかし,班員がお互いに評価することにより,一人一人の「よさ」を意識化させるまでにはなお工夫が必要であった。
このような課題解決の過程の中で,ジェクタビリティがかかわり,一人一人の「よさ」が生かさ