研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -035/135page
2 「よさ」を育てる学習指導の基本型
ア 「よさ」を育てる学習指導の基本型
基礎的・基本的な内容を定着させ,一人一人の「よさ」を生かし伸ばすことは短時間に可能なことではない。むしろ,長い目で見た変容を期すべき性格のものと考えられる。したがって,学習指導においては中・長期的な展望に立った継続的な授業実践によって初めて可能になるものと考えられる。
本研究では,意図的,意識的な構成による主題追究のための指導の展開を≪「よさ」を育てる学習指導の基本型≫として,図1−3のようにとらえた。この一連の指導を展開することにより,基礎的・基本的な内容を定着させ,一人一人の「よさ」を生かし,伸ばすことが可能になると考えた。
そして更に,基本型として考えた一連の指導の流れを,各教科でそれぞれ教材,領域を変えて繰り返し実践を展開することにより,児童生徒一人一人の変容がみられ,「よさ」を育てることができるものと考えた。
<図1−3>「よさ」を育てる学習指導の基本型
イ 「よさ」を育てる学習指導の段階
○ 「よさ」の把握
・児童生徒一人一人の「よさ」の把握を二段階に分けて行う。第一段階では児童生徒の全人的な「よさ」,第二段階では児童生徒の教科学習における「よさ」を把握する。
・把握した「よさ」を「個人カルテ」に累積記録する。この「個人カルテ」は,児童生徒一人一人についての「よさ」の把握,「よさ」を生かす指導,「よさ」の意識化の各段階を通して,その記録を累積しておくものである。
「個人カルテ」は,単元の展開に沿って児童生徒一人一人の必要な動きが見えるものであり,かつ精選された内容であることが要求される。
○ 「よさ」を生かす
学習指導の場面で,教材内容と学習指導のかかわりから,事前にとらえた「よさ」を生かしながら多様な学習活動場面を設定する。
「よさ」を生かすためには,児童生徒一人一人の興味・関心,能力.適性等に応じた教材,題材の選定や学習課題の設定が大切になる。また,学習形態についても,個別指導,T−Tによる指導,グループ学習等,児童生徒が多彩な学習活動を展開できるようにする。
○ 「よさ」の意識化
学習内容の定着は,児童生徒に自分の「よさ」を自覚させることが大切な要素になる。児童生徒に自分の「よさ」を自覚させるためには,自分で自分の「よさ」に気づくことだけでは不十分であり,友達や教師など他からも認められることが極めて重要な要素になると考えられる。
そこで,教材,題材内容と学習活動とのかかわりから,児童生徒一人一人の持つ「よさ」を意識化させる多様な学習活動の場面を指導計画の中に位置づける。
○ 「よさ」を伸ばす
「よさ」を生かしながら,適切な教材,題材で意図的な学習指導を繰り返すことによって,「よさ」が伸ばされ,育てられるものと考えられる。