研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -036/135page

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(4)昨年度の実践研究の概要
1 実践教科
 実践研究第一年次の昨年は,「研究仮説」を受けて「教科仮説」を設定し,「実践への方策と具体的な手だて」を明らかにし,「『よさ』を育てる基本型」に沿って実践を進めた。
 実践教科は,次の3教科である。
○小学校国語科(福島市立福島第二小学校 5年生)
○小学校社会科(川俣町立川俣南小学校 3年生)
○中学校数学科(福島市立吾妻中学校 2年生)

2 実践研究の概要
ア 「よさ」の把握
 国語科では,第一段階として親,教師,児童自身がとらえた全人的な「よさ」を把握し,第二段階として国語科学習における「よさ」を把握した。更に,クラス内での人間関係をみるために社会的距離尺度法による調査を行った。
 社会科では,社会事象に対しての見方や考え方の把握をした。更に,追究過程での思考の型と学習適性に関する調査を行った。
イ 「よさ」を生かす
 社会科では,「よさ」を生かすために児童の思考に応じた四つの「学習コース」を設定し,コースに応じた「学習のてびき」を活用させ,更に行動特性,表現特性に応じた授業の在り方を工夫した。
 数学科では,課題解決の過程において小集団学習を取り入れ,自他の考えを区別できるノートを活用し,一人一人が自分の考えを出し合い,見通しを持てるような学習活動を展開した。
ウ 「よさ」の意識化
 「よさ」の意識化の段階では,3教科ともほぼ共通に次のような手だてを講じた。
 教材,題材とのかかわりで意図的に編成したグループでの活動を通して表れた一人一人の「よさ」を,学習内容と学習活動の二つの観点から明らかにした。「『よさ』発見カード」「こんなところイイねカード」「学習状況カード」等を用いて,友達から出されたもの(相互評価),教師の観察から出されたもの(教師の評価),自分でとらえたもの(自己評価)の三つをつきあわせて,そこに書かれた自分の「よさ」について改めて意識するという活動の場面を設定した。この活動は,本研究の実践レベルでの特徴を示すものであり,互いに「よさ」を見つけていこうとする姿勢は,児童生徒一人一人についてだけでなく,クラス全体によい影響を与えることになった。
エ 「よさ」を伸ばす
 国語科においては,第一次実践で理解領域,第二次実践で表現領域(作文),第三次実践で表現領域(詩の創作)と三次にわたり,「よさ」を生かす学習指導を繰り返し実践した。
 社会科では,「よさ」を生かす指導の第1段階,第2段階と分けて,それぞれの段階で「よさ」を生かす指導を繰り返し実践した。

4 本年度の研究教科と実践研究の方向
(1) 研究教科
従来,できるだけ多くの教科についての実践研 究を提供するという考えから,毎年教科を変えて 進めてきた。本年度は,次の2教科について協力 校との連携を図りながら実践研究を進めた。
○小学校図画工作科(福島市立福島第二小学校 6年生)
○中学校英語科(福島市立吾妻中学校 2年生)
(2)実践研究の方向
前年度までの研究成果についての研究班での検 討,見直しをもとに,本年度は実践教科を変える だけでなく,研究内容,方法をより深める方向で, 次のような課題を持って実践研究にあたった。
○ 「よさ」の把握について,資料の収集,整理 が指導者の負担過重にならないよう把握の仕方 を工夫する。また,把握した「よさ」について 時,記録,累積するだけでなく,授業の中で有 効に生かせるような手だての具体化を進める。
○ 「よさ」を生かす学習指導の在り方と指導形 態を更に工夫し,その効果的な在り方を追究す る。

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