研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -040/135page

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3.図画工作科における実践研究の内容
(1)題材の設定とその指導にあたって
 実践研究は,第6学年の児童を対象とした。そのため,小学校で定着が図られるべき基礎的・基本的な内容を総合的にとらえることができた。
 学習指導要領の第6学年の目標及び内容を基に,使用教科書,学年の指導目標,学級の集団的な特性,教材の持つ価値等を考慮し,題材における指導内容の精選と指導の構造化を図った。更に,児童一人一人の「よさ」を生かし,伸ばすために,指導の個別化を図った。

1 教材観から
 第6学年になると,ものの見方や考え方の客観性・合理性が深まり,ものごとを系統的・相対的に想像することができるようになる。これらの特性を生かし,表現の多様化をねらいとして,「物語の絵」の製作を題材として設定した。
 教材は,想像が広がり表現欲求の高まるものが必要である。そこで,物語の主題そのものも学習の基礎的・基本的な要素ととらえ,登場する人物の善意や生き方の美しさについて書かれている新美南吉の「おじいさんのランプ」を取り上げた。

2 児童観から
 実践授業の対象は,第5学年からの持ち上がりの学級で,明るく,活動的であり,集団としてのまとまりも強くなってきている。図画工作科の学習については,多くの児童が興味・関心を示し,授業を楽しみにしている。ただ,表現力や作業時間の個人差が大きく,第5学年での「物語の絵」では,その世界を想像しきれなく苦労する児童もかなりあった。

3 指導観から
ア 基礎的・基本的な内容を定着させるために
 第6学年の目標・内容と題材,教材から基礎的・基本的な内容を精選し,指導の各段階r「よさ」の把握,生かす,意識化伸ばす)に組み入れた。
 各段階における基礎的・基本的な内容の定着を図るために,「学習の手引」と「表現の手引」を用いた。「学習の手引」には,鑑賞の観点,描画の要素,主題の表出,彩色と色あい,遠近と明暗について書かれている。学習の各段階(鑑賞,発想・構想,下絵の製作,彩色,仕上げ,鑑賞)で「学習の手引」を参考にさせながら主体的な活動をさせるようにした。
 「表現の手引」には,彩色の技法の基礎的・基本的なことを盛り込んである。下絵が完成し,彩色に入る段階で,「表現の手引」を参考にさせながら,「表現遊び」での技法を自由に使わせるようにした。表現材料の選択や使い方に幅を持たせ表現の技法が効果的に駆使されるような道具や材料を準備した。
 これらの手引を参考にして学習を進めさせる中で,指導の各段階で自己評価と相互評価をさせるとともに,教師の評価と指導によって,基礎的・基本的な内容の定着の確認をさせるようにした。
 評価の観点としては,構図のまとまり,彩色の技法、主題の追求等からとらえるようにした。
 教材の価値については,物語を聞いてとらえられる主題を,児童一人一人の表出する主題として考えさせるようにした。そこに,表現したい意図が表れるようにさせた。
イ 「よさ」を生かし,伸ばすために
 児童一人一人の構想や表現の意図,表現上の工夫等をグループの中で発表させ,お互いの「よさ」を認め合わせる場を各段階に設定した。
 具体的な手だてとして,各種のカードの活用を図った。「ひらめきカード」では,鑑賞から表現への移行の中で自分なりの表現意図を明確にさせ,次の段階に「よさ」を生かせるようにした。発展カードの「ホップカード」,「ステップカード」,「ジャンプカード」には,それぞれの観点によって,グループの中でお互いの「よさ」を発見し,記入させるようにした。
 また,「座席表」を活用し,授業の中で意図的に指名して発表させたり,あらかじめ準備しておいた助言をしたりするような手だても工夫した。
 これらの記録は,すべて「個人カルテ」に累積記録し,指導の観点や評価の観点(基礎的・基本的な内容の定着と「よさ」を生かし伸ばすこと)に基づいた助言や指導の資料とした。

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