研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -049/135page
2 児童一人一人の「よさ」を伸ばす面から
児童一人一人の「よさ」を伸ばすことは,「よさ」を生かし,意識化させることによって可能である。指導の各段階に具体的な手だてを用いて,「よさ」を生かしながら意識化させる工夫をした。少しずつではあるが,児童の「よさ」が伸ばされたものと思う。完成した作品の展示会等,発展的な取り扱いも工夫していくことが考えられる。
(5)ジェクタビリティについて
本題材での学習指導の各段階において,指導過程の中にジェクタビリティのかかわりを盛り込んだ。学習過程の中で,児童の活動によって刺激される観察力,判断力,思考力,創造力,表現力等狭義のとらえかたをした。
一つ一つの学習活動の設定は,指導目標とジェクタビリティとの関連から行われた。指導目標の面からは,本題材における基礎的・基本的な内容の定着を図り,「よさ」を生かし,意識化させ,伸ばす活動であった。一方,ジェクタビリティの面からは,狭義にとらえた能力が刺激されるように,具体的な活動として設定した。
このような学習活動の設定は,児童一人一人に内在している能力を,具体的な作品とその製作活動によって顕在化していったものと考える。
<表2−2>は,ジェクタビリティに関する児童の意識の変容調査である。項目1〜5は,観察力,判断力,思考力,創造力,表現力を意図したものである。
完成作品(青を多く使い、水彩・色鉛筆を併用)
作品の製作活動を通して,少しずつ能力が向上し,自覚されてきたものと考える。しかし,指導としての評価基準が明確でないため,この結果のみで評価するのは,困難である。
<表2−2>ジェクタビリティに関する児童の意識調査
(6)社会的距離尺度法による調査結果について
社会的距離尺度法による調査を,4月と11月に行った。これは,学級のすべての児童に対して友達が自分に抱いている親しさの度合いをみる調査である。<表2−3>は,その調査結果である。
図画工作科の授業実践によってのみ,このような変容があったとは考えないが,具体的な作品とその製作活動を通した「よさ」の認め合いの活動が少なからず影響しているものと言える。
<表2−3>社会的距離尺度法による調査結果
社会的距離指数 4月 11月 80 〜 84 1
0
85 〜 89 3
1
90 〜 94 3
1
95 〜 99 6
3
100 〜 104 8
4
105 〜 109 7
4
105 〜 109 5
20
総 数 (人) 33
33
5.まとめ
(1)研究の成果
1 仮説との関連からみた手だての有効性
本研究で,基礎的・基本的な内容の定着を図り,「よさ」を育てるために具体化した手だてについて考察してみる。
○本題材の指導内容を各段階ごとに重点化して配し,「学習の手引」や「表現の手引」を活用して