研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -051/135page
III 中学校英語科における実践研究
1.英語科における研究の仮説
(1)「基礎的・基本的な内容」.「よさ」とそのかかわり
英語科の学習指導においては,基礎的・基本的な内容を身につけさせる過程で,生徒一人一人の個人差に深くかかわる思考力,想像力,直観力,表現力等の内面的な能力について重視することが必要であると考えた。
そして,英語科学習において生徒一人一人が持つ「よさ」は,学び方,思考の仕方,表現の仕方行動の仕方等の違いとして表れるものと考えた。
更に,生徒一人一人の「よさ」が生かされ,基礎的・基本的な内容が定着し,「よさ」の伸長が図られる過程において,ジェクタビリティ(判断力,表現力,創造力,思考力等の能力)が深くかかわりを持つものと考えた。つまり,基礎的・基本的な内容の定着を図る過程に,生徒一人一人の持つ「よさ」が生かされるような学習活動,言語活動を取り入れることで,ジェクタビリティが刺激され,それぞれが相互に作用し合うことの繰り返しにより,基礎的・基本的な内容が定着するとともに,「よさ」の伸長も図られるものと考えた。
(2)研究の仮説
英語科学習指導において,生徒一人一人の持っている「よさ」を把握し,学習内容とのかかわりで「よさ」を生かす視点から,表現特性や興味・関心に応じた指導の在り方を工夫すれば.基礎的・基本的な内容を身につけさせることができるとともに,一人一人の「よさ」を生かし,伸ばすことができるであろう。
≪仮説について≫
一人一人の持つ「よさ」の把握
学習方法,学習形態の嗜好,学習態度等の学習全般にかかわる調査及び英語科学習に関する目的意識,興味・関心,4技能における得意・不得意等の調査を事前に実施するとともに,教材内容とのかかわりから生徒の表現特性をとらえる調査を行い,それらの調査を分析し,生徒一人一人の持つ「よさ」をとらえる。
表現特性や興味・関心に応じた指導の在り方のエ夫
基礎的・基本的な内容の定着を図る過程で,生徒の持つ表現特性を生かす学習活動及び学習形態を取り入れる。
具体的には,「聞く・話す」,「読む」,「書く」のグループを編成し各グループがそれぞれの表現特性に応じた教材を用いて学習できるようにする。
また,学習した言語材料を用いながら,自分の表現特性を生かして行う言語活動を授業の終わりに位置づけるとともに,単元のまとめの段階に総合的な言語活動の場を設定し,生徒の興味・関心に応じてテーマを選択させ,同じテーマを選んだ者どうしでグループを編成させ,表現活動に取り組ませる。
基礎的・基本的な内容を身につけさせる
生徒一人一人が,言語材料の定着を図る場で,自分の表現特性に応じた学習活動を進めるとともに,表現特性を生かした言語活動を繰り返し行うことにより,基礎的・基本的な内容が定着するものと考えた。
「よさ」を生かし.伸ばす
事前の調査及び学習指導の場面で,把握した生徒一人一人の「よさ」を生かしながら,学習内容と活動の面から生徒個々の持つ「よさ」を意識化させるような場を設定するとともに,意識化された「よさ」を更に生かすような学習活動や言語活動を位置づける。
これらの「よさ」を生かす学習指導を繰り返すことにより,生徒一人一人の持つ「よさ」が伸ばされるものと考える。