研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -063/135page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

自分の得意な面が生かされただけでなく,その得意な面についての意識が除々に高まっていく過程が読み取れる。
 また,表3−3の生徒の感想からもその具体的な様子がうかがえる。
<表3−3>−A男の感想−
第4時 自分で絵を見て問題などを作り.自分なりに話すことができた。
第6時 自分で作った文をたいへんよく話せた。聞いたり.話したりすることが前よりも好きになったようだ。
第8時 課題作りに参加して.まあまあの発表文が作れたし.発表もまとまりよく発表できたので良かった。今までの学習を通して,聞いたり,話したりする能力が少し高まったような気がする。

2 「よさ」の意識化
 生徒一人一人の持つ「よさ」が生かされ,更に伸ばされるためには,自らの「よさ」に気づくことも大切な要因である。そのためには,指導計画の中で意図的に「よさ」を意識させる場を設けることが大切である。表現特性に応じた学習を数多く取り入れた第4時,第6時の学習の際行った自己評価やまとめの言語活動の際行った自分,友達,教師の三者による「よさ」の発見は,「よさ」の意識化につながる一連の手だてである。
 第4時,第6時の自己評価を見ると,クラスの約半分の生徒が自分の表現特性にふれながら記述していた。このことは,具体的な活動が,自分の「よさ」の意識化へつながる確かなステップとして有効に働いたと考えられる。
 「よさ」の意識化を図る手だてとして,第8時にグループの中でお互いの「よさ」を発見し合う場を設定した。
 自己評価,相互評価,教師の評価の三者の評価から,自分の「よさ」を意識させるために,友達,自分,教師が記述したものを「『よさ』発見カード」にまとめさせた。自己評価,教師の評価については,本人の「よさ」を表現特性という観点から記述しているものが多かった。しかし,相互評価については,総合的な言語活動の様子からのみとらえただけで,友達に対する「よさ」を表現特性とのかかわりで記述している生徒は,少なかった。
 「よさ」の意識化を図る上で,この相互評価は大切な要素であると考えられるので,その観点と方法を今後更に検討していく必要がある。

(4)基礎的・基本的な内容の定着について
 基礎的・基本的な内容の定着を図るために「よさ」の把握の段階で,本単元にかかわる基礎的・基本的な内容の分析を行い,指導事項を洗い出しTop−Down式の学習の流れを中核として,その中で,生徒一人一人の持つ「よさ」に着目しながら多様な学習活動を取り入れた。
 表3−4は,単元終了後に行った言語材料の定着をみるためのテストの結果をグラフ化したものである。
<表3−4>言語材料の定着
<表3−4>言語材料の定着
 この結果からもわかるように,言語材料については,十分な定着が図られたことが実証されている。このことから,単元の学習の流れの中で取り入れた生徒の持つ「よさ」を生かす活動,具体的には,ミニミニ言語活動や表現特性に応じたグループ学習,興味・関心に応じた言語活動,更には,T−Tによる指導の個別化など,これらの手だてが基礎的・基本的な内容の定着を図る上でも有効に働いたものと考える。

(5) ジェクタビリティの育成について
 基礎的・基本的な内容の定着と生徒一人一人の「よさ」の伸長に深くかかわりを持つジェクタビリティについて,狭義の意味から考察する。
 今回の研究においては,ジェクタビリティの諸能力の中から,特に表現力を刺激する学習活動を数多く位置づけてきた。
 この活動を通して,生徒の中の内面的な能力が刺激され,相互作用し合いながら,実際の表現(「聞く・話す」「読む」「書く」)となって顕在化していったものと考える。そのことは,まとめの言語活動で見られた生徒の発表やQ&Aの活動にその一端をうかがうことができる。

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。