研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -064/135page

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 また,このような活動の積み重ねがジェクタビリティの育成につながっていくものと考える。

5.まとめ
 今回の実践研究は,単元の学習を通して,基礎的・基本的な内容を身につけさせ,生徒一人一人の「よさ」を生かし,伸ばしていくことであった。
 事前における基礎的・基本的な内容の分析,生徒の「よさ」の把握にはじまり,基礎的・基本的な内容の定着を図りながら,生徒一人一人の持つ「よさ」を生かす指導の在り方を追究する中で,生徒は自らの「よさ」を意識し,「よさ」を発揮した学習を展開していった。
 その成果は.グループ学習での取り組みの様子やまとめの言語活動での生き生きとした姿に表れていた。
 また,基礎的・基本的な内容についても分析と考察でも述べたように,確実な定着が図られたものと考える。
 なお,各学校で実践するにあたっては,次のことに留意する必要があると思われる。
1 個の表現特性を把握するための資料を累積しより適切な処遇を生徒一人一人に行うことができるようにする。
2 生徒一人一人が具体的な活動を通して,自らの「よさ」を意識できるような自己評価,相互評価を適切に行うようにする。
3 グループ学習での成果を,全体の場で交流させ,多様な見方や表現の仕方があることに気づかせる。
4 学習した言語材料が応用できるよう,できるかぎり言語活動の場を設け,生徒一人一人の表現能力を高めていく。

【授業者の感想】

福島市立吾妻中学校教諭 佐々木 慶子・佐久間 民子

 基礎・基本の定着という面で,今までの授業を振り返ってみると,小集団学習形態を取り入れての全員指名,全員満点を目指す書き取りテスト,大きい声量での反復口頭練習,暗記による読みテスト,積極的な挙手の励行などを子どもに課してきた。しかし,これは,文法事項と書くことに重点が片寄っており,どちらかというと教師主体の授業が展開されていたように思う。もう少し子どもの主体性を大切にするような英語指導の在り方はないものかと考えていたところ,ちょうど今回の研究テーマと出会い,よい機会を得ることができたと思っている。
 このテーマに取り組むことにより,基礎・基本の定着のさせ方も,教師が一方的に教え込むよりも,そこに子どもたちの好みや選択を盛り込めば,子どもの自覚が高まり,基本的な要素を与えることにより,秩序のとれた自己表現ができるということを実践を通して学ぶことができた。
 何よりもうれしかったことは,新たに取り入れた活動に対して,子どもたちが楽しそうに参加してくれたことであった。新しい対応,例えば表現特性や興味・関心に応じた小集団学習にもすぐに適応し,それらの活動が子どもたちの興味と集中力の増強につながったのではないかと思われる。
 検証授業の最後に,興味・関心に応じたグループ活動に取り組んだ成果の発表の場があった。発表内容は単純であったかもしれないが,それぞれの生活や好み,更に子どもたちの持つ特性も考慮した活動で,全員参加のもとに行われた。日頃,学力不振と思われている子も,意外な実力を発揮してスムーズな言語活動が展開されたと思う。
 それにしても,子どもたちの地力と受容性の高さには,驚かされた。そのすばらしさを自分の指導法のマンネリ化と研究不足からせばめてはいけないと改めて考えさせられた。このことが今回の研究を通しての大きな収穫であった。


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