研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -065/135page
IV むすぴ
(1)本年度の研究成果
本年度は,研究主題を実践的に追究するために,「『よさ』を育てる学習指導の基本型」に沿って,一人一人の「よさ」の把握から「よさ」を生かし,伸ばすまでの段階を,単元,題材の指導計画に意図的,計画的に位置づけた指導の在り方を軸にすえて実践研究を行った。
把握した「よさ」をどのように生かしていくか,生かすためにどのような場面を設定するか,生かされた「よさ」をどのように意識化させ,育てていくか等,一人一人の「よさ」を深くみつめ,広く取り上げる指導の手だてを工夫し,新たに試みた。これは,まさに個人差に応じた指導であり,より有効な学習方法,学習形態の追究そのものである。
この学習の中で,児童生徒は自分の活動の場があるという認識に立ち,自分が生かされていることの実感,喜びから進んで学習に取り組む姿が生じてきた。
また,機会をとらえて自他の「よさ」を見つけようとする活動を通して,「よい面を見ていこう」とする意識がおのずから醸成され,クラスの雰囲気が好ましいものになるという結果も見られた。
一方,基礎的・基本的な内容の定着の面でも好結果が得られた。「よさ」の把握の段階で,単元にかかわる基礎的・基本的な内容の分析から指導事項を洗い出し,一人一人の「よさ」に着目しながら多様な学習活動を展開したことが,量的,質的な個人差に応じる有効な手だてとなり,その定着が図られる結果となった。
狭義のジェクタビリティの育成について,検証授業の指導過程に具体的に見えるものとして取り上げ,その涵養を図った。思考力,表現力,判断力,創造力等の能力を活用し,働かせる場を意図的に設定することは,一人一人のものの見方や考え方を育てるのに有効であり,かつ,教材の持つ価値に迫るものとしても重視しなければならないことが分かった。
(2)来年度への研究課題
本研究は来年度も継続される予定である。研究を深めるという観点から,本年度の実践で講じた指導の手だての有効性の見直しの上に立って,研究主題に迫る新しい手だての工夫,開発が来年度期待されるところである。
本年3月に告示された新学習指導要領では「基礎的・基本的な内容の指導を徹底し,個性を生かす教育の充実」が新たに打ち出されている。よりよい学習指導の方向を求めて授業に取り組まれるとき,本研究が先生方の実践の中で活用いただけることを期待します。
本研究の推進にあたり,ご協力をいただいた協力校の先生方に感謝の意を表するとともに,各位のご意見,ご助言を期待する次第であります。
<参考文献>
・小学校指導書 図画工作編:(現,新 文部省)
・美術科教育の基礎知識:宮脇理監修(建帛杜)
・想像による絵画表現:渡部景一著(開隆堂)
・真の個性教育とは:梶田叡一著(国土社)
・中学校指導書 英語編:(現,新 文部省)
・個に応じた英語科の授業展開:和田稔編(明治図書)
・基礎能力をつける英語指導法:佐野正之著(大修館)
・中学英語の進め方:織田稔・樋口忠彦編著(杏林堂)
<研究協力校及び協力委員>
○福島市立福島第二小学校
砂 山 貞 雄 佐 藤 吉 郎
○福島市立吾妻中学校
佐々木 慶 子 佐久間 民 子
<プロジェクト研究メンバー>
高 橋 俊 彰 五十嵐 康 雄
菅 野 暁 野 中 定
深 澤 陽 一 関 博 之
松 浦 芳 孝 星 和 久
渡 辺 博 志 辺 見 広 一
西 牧 裕 司 小 林 正
田 中 靖 則 吉 田 尚
林 宗一郎