研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -075/135page
(2)授業の展開
1 導入の段階(オリエンテーション)
ここでは,自分で収集した資料のデータの散らばりの様子を調べるという本時のねらいと学習の進め方を確認した。このことによって,学習の仕方が確実に把握され,一人一人が自分にあった課題解決の方法の選択がなされた。
2 展開の段階
児童が選んだ学習の仕方によって,多様な学習活動が展開された。
○すぐにパソコンに向かい,各自が準備した資料を処理している児童
○度数分布表と柱状グラフを作成してから,パソコンで処理し,結果を確かめる児童
○自分の予定した学習内容を終え,市販ソフトを使って発展学習に取り組む児童等
この段階で教師は,児童の助言と援助に徹した。授業展開が複線型であるため,個々の児童の学習状況を把握することは容易ではないが,いくつか設けられているチェック機能によって,児童のつまずきに適切な助言指導が行われた。
図3 パソコンを活用した授業の様子
3 終末の段階
展開部で各児童が到達できた学習内容の代表的な例を取り上げ,児童に発表させた。発表の内容は,分かったことや感じたことを中心に,自分の学習の進め方の反省なども発表された。
3 結果と考察
(1)児童の事前・事後の評定尺度の比較
評定尺度IIをもとに児童の変容を調査したところ,図4のように全体的にプラスの変容が見られた。
図4 事前・事後の評定尺度II
(2)情報の収集,選択,処理能力について
パソコンが導入される以前から,情報の収集,選択,処理能力を育てることに取り組んではいたが,なかなか効果が表れてこなかった。しかし,短期間パソコンを活用した研究実践をしたことで,わずかではあったが向上したことは,パソコン活用の一つの効果と言えよう。
(3)情報手段の特徴の理解,情報機器の具体的な操作について
事前調査で問題とされたこれらの要素についても,短期間ではあったが比較的大きく向上してきている。授業の中でパソコンをできるだけ活用してきた成果だと思われる。
(4)今後の課題
1 図4から,情報活用能力はわずかながら向上した。
今後も,授業の中におけるパソコンの活用の仕方を工夫しながら,研究実践を継続し,改善を図っていく必要がある。
2 要素A収集・B選択・C処理の他に研究の視点を広げ,D創造・E伝達も含めた情報の処理と創造力が高められるよう全体的な研究実践を深めていく必要がある。