研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -079/135page

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ープも見られた。
4 下位の児童であってもコンピュータの画面は教科書や他の資料よりも印象強く,自分で操作ができることもあって,意欲的に学習が進められていた。
 このようなコンピュータ活用による長所が見られた反面,画面に表示されている内容についての読み取り・判断(いわゆる情報の処理)については,一部の子どもにいくつかの問題点が見られた。
○ 内容をよく理解する前に画面に表示されている内容をノートに写しとることが中心になっている児童
○ 画面に表示されている文字が多いため,内容が理解できない児童
○ キー操作によって移り変わる画面にのみ興味がいってしまい,画面からの資料の収集を行わなかった児童
 このような問題となる児童の姿は見られたものの,授業の終末段階では,公害の実態,原因,対策等について調べたことを活発に話し合う場面が見られたり,コンピュータの画面で再確認する児童の姿が見られたりした。このことから本時の目標は,大部分の児童に達成させることができたものと思われる。
3.結果と考察
(1)事後調査結果について
図3 事後調査(評定尺度II)
    図3 事後調査(評定尺度II)

 評定尺度IIによる事前調査で低かった要素A〜Eについて,事後調査結果を見ると,飛躍的な向上とはいえないが,わずかにプラスの変化が見られた。
 また,上位,中位,下位の児童を3グループごとにA〜Eの変化を分析すると,中位や上位の児童の伸びほどではないが,学習の成立が難しいといわれる下位の児童においても向上が見られた。
  事 前 事 後 変 化
上位の平均 3.5 3.9 +0.4
中位の平均 2.9 3.2 +0.3
下位の平均 2.7 2.9 +0.2


(2)研究の成果と今後の課題
1 研究の成果
ア.コンピュータに関する児童の興味・関心は高く,学習活動の適切な場面にコンピュータを位置付けることにより,学習態度がより主体的になってきた。
イ.上位,中位,下位の3グループの変容から,学習課題の解決手段としてのコンピュータの活用は,情報活用能力を育成するために有効であった。
ウ.追究の過程において必要と思われる資料を可能な限りコンピュータに入力しておき,児童が主体的に資料を検索して活用できるような仕方を試みたが,このことにより,個性や能力に応じた学習の展開ができるようになってきた。
2 今後の課題
ア.コンピュータを使った学習場面で一部の児童に問題が見られたので,児童の立場に立ち,すべての児童のはたらきかけに対応できるコンピュータソフトの開発や改善を図っていく必要がある。
イ.図3に見られるように,ねらいとした情報活用能力はわずかな向上にとどまった。このことは,コンピュータ活用の方法や位置付けに改善の余地があることを示すものであり,更に授業での実践を積み重ね,改善を図っていく必要がある。

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